Hungerford4章読む(12/12)その2

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」12日目の記事です。


今日は3節の終わりまで読みました。

単位的環 Rやアーベル群 J \mathbb{Z}加群とみなせるので、 \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J)において和 (f+g)(r)=f(r)+g(r)が定義できて、この和によって \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J)はアーベル群となります(一般にアーベル群の準同型であれば成立)。さらに Rの左作用を (rf)(x)=f(xr)とすることで \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J)は(単位的)左 R加群となります。 fの中の掛け算が逆向きになっているのは積と作用の結合法則 (r(sf) )(x)=(sf)(xr)=f(xrs)=( (rs)f)(x))を満たすためです(このような計算を考えるために fの定義域は両側から積が可能でなければならず、例えば左 R加群準同型 f: A \to Bは一般に R加群とはならない)。

特に Jが可除なアーベル群のとき、左 R加群 \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J)単射的になります(L3.11)。証明はL3.8を用います。つまり任意の Rの左イデアル Lからの R加群準同型 f: L \to \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J) h: R \to \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J)に拡張できることを示します。細かい流れは未来の自分に任せますが、 f: L \to \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J) g: L \to Jの間を、 fからは g(r)=(f(r) )(1_R)として、逆に gからは (f(r) )(x)=g(xr)とすることで移し合えることと、 J単射加群なので、 L \to J R \to Jに拡張できることを用いています。

残りで射影的加群の定理P3.12、P3.13(それぞれC3.3、T3.4の単射的版)を証明しています。

先にP3.13を見ます。(i)と(ii)は単にC3.3の射を反転させればよさそうです。自由加群の双対版は存在しないので、(iii)ではその代わりに Jを部分加群に持つ Bを考えています。証明も比較的シンプルなので省略します。

P3.12の証明はかなり技巧的に見えます。射影的加群にとっての自由加群のような便利な例が存在しないため、 Aを埋め込む射影的加群を自分で構築する必要があります。
L3.10より単位的 R加群 Aは(アーベル群なので)可除アーベル群Jに埋め込まれます( f: A \to J)。写像の合成を考えると \bar{f}: \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,A) \to \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J), \bar{f}(g) = fgが誘導され、これが単射 R加群準同型になります。 R加群準同型は(アーベル群の準同型なので) \mathbb{Z}加群準同型なことから \mathrm{Hom}_R(R,A) \hookrightarrow \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,A)(厳密には R部分加群であることを示す)。  Rから R加群への R加群準同型 f f(r)=f(r 1_R)=r f(1_R)より 1_Rの行先により唯一に定まることから、 A \to \mathrm{Hom}_R(R,A) a \mapsto f_a, f_a(r)=r f(1_R)=raと定義すると、これは単射(な R加群準同型)となる。これらの写像を合成すると、 Aから \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J)への埋め込みが構成され、L3.11より \mathrm{Hom}_{\mathbb{Z}}(R,J)が射影的 R加群であることから証明が完了します。


二重括弧を書くと勝手に注釈になるので困ってましたが、スペースを入れるといいようです。

明日も頑張ります。