Hungerford4章読む(12/19)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」17日目の記事です。当日途中まで書いていたのがあったのですがPCが再起動して消えてしまいしばらくやる気がなくなっていました。今から3日分を消化します。


 R上の左加群 Aの双対 A^*は準同型 A \to Rの集合でした。 f \in A^*として、 f(a) ( \in R) \langle a , f \rangleとブラケットで表記します。 A^*は左 R準同型の集合なので \langle r_1 a_1 + r_2 a_2 , f \rangle = r_1 \langle a_1 , f \rangle + r_2 \langle a_2 , f \rangle、また A^*が和 (f_1 + f_2)(a) = f_1 (a) + f_2 (a)と右作用 (fr)(a) = f(a)rによって右 R加群となることから \langle a , f_1 r_1 + f_1 r_2 \rangle = \langle a , f_1 \rangle r_1 + \langle a , f_2 \rangle r_2が成り立ちます。
もう一つ、線形関数の表示に便利な記号としてクロネッカーのデルタを導入します;単位的環 Rと添え字集合 I \ni i,jとして、 {\delta}_{ij}を、 i=j \to 1_R \ | \ i \neq j \to 0

単位的環 R上の単位的自由加群 Fを考えます。 Fの基底を Xとして、 x \in Xに対して写像 f_x : X \to R f_x (y) = {\delta}_{xy}で与えると、線形関数 \bar{f_x} : F \to Rが定まります。記号が重複しますがこの線形関数を f_xとします。
T4.11によると、 \lbrace f_x | x \in X \rbraceは線形独立な F^*の部分集合で、その濃度は |X|となります。濃度に関してはほぼ明らかです。実際に線形和を構成して適当な x \in X写像してみると線形独立性も確認できます。さらに |X|が有限のとき、具体的に X = \lbrace x_1 , ... , x_n \rbraceとして、任意の f \in F^*に対して f(x_i)=s_i \in Rとすると、 \sum_{i=1}^n f_i s_i = fとなることが計算で確認できます。したがって F^*が自由加群となり、 \lbrace f_x | x \in X \rbraceがその基底(双対基底)になります。
(可除環 D上の)ベクトル空間 Vの場合についてもう少し考えます。可除環上の加群は自由加群なので V^*は必ず自由加群です。有限次元の場合は \mathrm{dim} V = \mathrm{dim} V^*となるので、P2.9を用いると V \cong V^*が成り立ちます。ただし無限次元の場合は、 \mathrm{dim} V^* > \mathrm{dim} Vとなります。この理由は、 f: X \to Dの集合 D^Xを考えると分かるらしいです。

 (f+g)(x)=f(x)+g(x)とすると、 D^Xはアーベル群となり、右作用 (fr)(x)=r(f(x))によって D^Xは右 D加群となります。 f: X \to Dから \bar{f}: V \to Dを定める操作 \bar{-}と、 \iota : X \to Vが誘導する \bar{\iota},\bar{f} \mapsto f=\bar{f} \iotaは互いに逆写像(多分1)で、しかも準同型(多分2)だとすると、 V^* \cong D^Xとなるはずです(追記20220531: Dual space - Wikipediaを見るともう少しシンプルな議論がありました: \mathrm{Hom}_R ( \sum_{x \in X} D , D ) \overset{T4.7}{\cong} \prod_{x \in X} (D , D) \overset{T4.9}{\cong} \prod_{x \in X} D)。
そこで D^Xの次元を考察したいのですが、無限次元のとき、 \mathrm{dim} D^X = {|D|}^{|X|}となり(?)、(追記20220531:特に |D| \geq 2なことから) |X|よりも大きくなってしまいます。 (追記20220603:(?)の部分は、Erdős–Kaplanskiの定理というようです。ちょっと長くなりそうなので記事を分けます)

畳んだ部分の方向性があってるかどうかは知りませんが、(追記20220603:意味不明すぎたので消した)何となく D^X Xで添え字づけられた弱直積で書けないところが理由っぽい気がします。同じ段落で、基底が無限でさらに可除ではない一般の環上の場合は F^*は自由加群になるとは限らない、という話をしていて、実際 \lbrace f_x | x \in X \rbrace F^*を張らない例を演習としています。これも F^*が(弱直積でなくて)直積なために、 f_xの有限和では全ての要素を書けないからだと思います。

最後に双対の双対というものを考察して4節は終わります。すなわち左 R加群 Aの二重双対 A^{**} = (A^*)^* = \mathrm{Hom}_R (\mathrm{Hom}_R (A,R),R)を考えます。内側のHomは右加群なので、外側のHomは右加群準同型の集合であり、これは左 R加群となります。 \theta : A \to A^{**}について、 \theta (a) : A^* \to R (\theta(a))(f) = \langle a , f \rangleとすれば、 \langle a , f_1 r_1 + f_1 r_2 \rangle = \langle a , f_1 \rangle r_1 + \langle a , f_2 \rangle r_2より右加群準同型であり、 \theta : a \mapsto \theta (a) = \langle a , - \rangle \langle r_1 a_1 + r_2 a_2 , - \rangle = r_1 \langle a_1 , - \rangle + r_2 \langle a_2 , - \rangleによって左加群準同型となります(T4.12)。
続いて、 Rが単位的かつ Aが自由ならば \theta単射であり、さらに Aが有限基底を持つ場合 \theta全射(前と合わせると同型)となります。前半は \theta (a)を具体的に書いたのち f_xに作用させるとわかります。後半は、 A^*, A^{**}が連鎖的に有限な基底(それぞれ \lbrace f_x | x \in X \rbrace , \lbrace g_x | x \in X \rbrace)を持つことがわかりますが、特に g_x (f_x) = {\delta}_{xy}とすると \theta (x) = \langle x , - \rangle = g_xとできることから証明します。


いよいよ本当にわからなくなってきて写経マシンになってきた…

今日はまだ頑張ります…。冒頭に「今から3日分」と書きましたが、それは無理そうですね…