Hungerford7章読む(12/2)

これは「今年中にHungerford7章読むぞ Advent Calendar 2022」2日目の記事です。


前回も書きましたが、単位的環 R上の自由加群の間の準同型に対する行列を得るには順序付けられた基底の選択が重要でした。つまり同じ準同型から異なる行列が得られうるのですが、T1.6はそのような行列の間にどのような関係があるのかが調べられています。

その準備として、L1.5では逆行列が存在する必要十分条件がある同型の行列となることを証明しています。T1.3によって合成写像が行列積と対応することと、T1.2から同じ基底の間での恒等写像に対応する行列が単位行列を用いてやればよさそうです。

さて、T1.6です。単位的環 R上の自由加群 E, Fがそれぞれ有限の順序付き基底 U, V, |V|=m, |U|=nを持ち、これらに対する f \in \mathrm{Hom}_R (E,F)の行列が A \in \mathrm{Mat}_{nm} Rとします。この時、 fが異なる順序付き基底 U', V', |V'|=m, |U'|=nに対する B \in \mathrm{Mat}_{nm} Rを持つことと、可逆行列 P,Qが存在して B=PAQとなることが同値です。今回も環が次元不変とは限らなくても言いたいからか言い回しが難しいですね。
特に自己準同型 f \in \mathrm{Hom}_R (E,E)で、 fの行列が始域と終域の基底に同じもの Uを取った A \in \mathrm{Mat}_{nn} Rのとき、異なる基底に対する fの行列 Bが存在することは B=PAP ^{-1}となる Pが存在することと同値です(C1.7)。T1.6のような行列 A,Bの関係を同値、C1.7のような関係を相似といいます。ちょっと言い方がややこしいですが、同値関係や相似関係は同値関係です。

 \Leftarrowの証明で一部だけ特に説明が無かったところをメモします。 Eの順序付き基底 U = \lbrace u_1 , ... , u_n \rbraceとして、同型 g: E \to E Uに関する行列を Pとします。このとき g(U) Eの順序付き基底になるのは gが同型なことから大丈夫そうです。恒等写像 1_Eの順序付き基底 g(U) Uに関する行列は、 1_E (g(u_i)) = g(u_i) = p_{i1} u_1 + ... + p_{im} u_mとなる (p_{ij})ですが、これは Pのことです。ベクトルを動かすことは基底を反対方向に動かすことと同じだということですね。


一般の(単位的)環を考えてるので微妙に一般化されていますが、まあ今のところは見知った線形代数ですね。

明日も頑張ります。