Hungerford4章読む(12/16)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」16日目の記事です。久々に当日に書き始められた。


アーベル群 Aが環 Rの左加群であることを {}_R A、右 S加群であることを A_Sと書くことにします。左 R加群かつ右 S加群であって、 r(as)=(ra)sを満たすアーベル群 A R-S両側加群と呼び、 {}_R A_Sと表記します。

12/12その2で、アーベル群 \mathrm{Hom}_R (A,B)は一般に R加群にならないと書きました。さらに A=Rの場合を考えて \mathrm{Hom}_R (R,B)は左 R加群になるとも言いました。T4.8で、より様々な場合にHomがどのような加群の構造を持つかが一気に述べられています。
まず {}_R A , {}_R B_Sについて、 \mathrm{Hom}_R (A,B) Sの作用 (fs)(a)=(f(a))sによって右 S加群になります。さらに左 R加群準同型 \phi : A \to A'が誘導する写像 \bar{\phi} : \mathrm{Hom}_R (A',B) \to \mathrm{Hom}_R (A,B)が右 S加群準同型になります。また圏でも作るのか…?前半の主張は加群の定義を確かめていけばよくて、 \bar{\phi}についてはT4.1でアーベル群の準同型なのはわかっているので作用に関してうまくいくことを計算すれば大丈夫です。
同様に {}_R C_S , {}_R Dについて、 \mathrm{Hom}_R (C,D)が作用 (sg)(c)=g(cs)によって左 S加群になることと、左 R加群準同型 \psi : D \to D'が誘導する \bar{\psi} : \mathrm{Hom}_R (C,D) \to \mathrm{Hom}_R (C,D')が左 S加群準同型になることが言えます。

特別な例として、 R-R加群の場合を示します。例えば Rが可換の場合は任意の R加群 C rc = crとなるような R-R加群であり、 \mathrm{Hom}_R (A,B) (rf)(a) \stackrel{左作用}{=} f(ar) \stackrel{可換}{=} f(ra) \stackrel{準同型}{=} r(f(a)) \stackrel{可換}{=} f(a)r \stackrel{右作用}{=} (fr)(a)によって rf = frとなる R-R加群になります。

 R自身を R加群とみなすと、左 R加群 Aに対して \mathrm{Hom}_R (R,A) \mathrm{Hom}_R (A,R)もそれぞれ左 R加群、右 R加群となります。12/12その2で、単位的環 Rと単位的環 Aについて \psi : A \to \mathrm{Hom}_R (R,A)単射であることを用いましたが、実はこれは同型になります。すなわち \psi : a \mapsto f_a , f_a (r)=ra \phi \mathrm{Hom}_R (R,A) \to A , f \mapsto f(1_R)を考えると、これらが互いに逆写像の左R加群準同型になります(T4.9)。

 \mathrm{Hom}_R (A,R)はどのようなものでしょう…。 A \to Rというのは複雑な構造から単純な構造への写像なので、どのように潰せばいいのかを考えるには Aについて何かわかってる必要を感じますね…。少し気になりますが詳細は恐らく後に出ることを期待して、とりあえず \mathrm{Hom}_R (A,R)のことを Aの双対 A^*と言い、その要素を線形関数と言います。T4.8からの議論は右加群でもよくて、右 R加群 Bの双対 B^* = \mathrm{Hom}_R (B,R)は左 R加群となります。

†デュアル†といういかつい名前ですが所詮はHomなので、T4.1から言ってきた話を適用することができます(T4.10)。すなわち左 R加群準同型 \phi : A \to Cが右 R加群準同型 \bar{\phi} : C^* \to A^*を誘導し(作用は (fr)(c)=f(c)r)、加群の同型 (A \oplus C)^* \cong A^* \oplus C^*が成立します(T4.7)。さらに Rが可除環のとき、左ベクトル空間の完全列 0 \to A \stackrel{\theta}{\to} B \stackrel{\zeta}{\to} C \to 0があるとき、右ベクトル空間の完全列 0 \to C^* \stackrel{\bar{\zeta}}{\to} B^* \stackrel{\bar{\theta}}{\to} A^* \to 0が誘導されます。
この証明について、本ではT4.5などを見ろと言っていますが、わからなかったので別の方法でいきます。T4.6の形が示したいものと同じなので、 R単射的であることが言えたらよさそうです。T2.4より可除環上の加群は自由加群で、係数環 Rは任意の R加群の直和因子となります(T2.1)。P3.13より R単射的となるので、T4.6を使うことができます。


明日も頑張ります。