Hungerford7章読む(12/1)

これは「今年中にHungerford7章読むぞ Advent Calendar 2022」1日目の記事です。

昨年に続いて今年もやっていきます。本当は5章にしたかったのですが、明らかに1ヶ月で読める分量ではないのでやめました。7章は「線形代数」と一応馴染みがある(はずの)範囲なのでこれならいけるでしょう、多分…。

誰も見ないのはわかった上で一応書いておきますが、これは私の勉強のモチベ維持のための個人的な記録であり、勝手な(誤りの含む)記述や書き換えが含まれるため、絶対に参考にしないでください。


線形代数ということで行列がメインだと思われますが、序文を読むとベクトル空間間の線形写像だけじゃなくて自由加群間の準同型も射程に入っているようです。せいぜい複素数の行列しかしらないので怖いですね。


T1.1までで行列の定義とその演算について述べられています。すなわち、環 R上の n \times m行列 A \in \mathrm{Mat}_{nm} R Rの元が縦に n行・横に m列のテーブル状に並べたもの (a_{ij})_{i \in \lbrack n \rbrack, j \in \lbrack m \rbrack}として、 \mathrm{Mat}_{nm} Rが成分ごとの和と各成分へのスカラー倍によって R-R加群*1となること、 n \times p行列と p \times m行列の行列積が結合的かつ和に対して分配法則が成り立つこと(すなわち \mathrm{Mat}_{nn} Rはこの和と積によって環となること)を言っています。

以降、行列を(単位的) R自由加群の間の準同型として考察するので、環 Rは単位的です。
T1.2によって、 \mathrm{Mat}_{nm} Rは要素 n個の基底*2の自由 R加群 Eから要素 m個の基底の自由 R加群 Fへの準同型 \mathrm{Hom}_R (E,F)と同一視されます。
 f \in \mathrm{Hom}_R (E,F)による Eの基底 \lbrace u_1 , ... , u_n \rbraceの行先を Fの基底 \lbrace v_1 , ... , v_m \rbraceで書くと、 f(u_i) = r_{i1} v_1 + ... + r_{im} v_mという風にして一意に r_{ij} \in Rが得られます。これを並べると行列 (r_{ij}) \in \mathrm{Mat}_{nm} Rが得られます。計算によりこの割り当てがアーベル群準同型であること、自由加群の性質により基底の行先が fを決定することを考えれば全単射であること(単射は零行列を考える)がわかります(アーベル群として同型)。特に R可換環のとき、 \mathrm{Hom}_R (E,F) (rf)(x)=f(xr)=f(rx)=rf(x)によって R加群になり、 R加群として同型になります。
行列 (r_{ij})の決定には基底の順序も用いられていることに注意します。

T1.2によって準同型の計算は行列積に置き換えることができます:  f(u) = f({\sum}_{i=1}^{n} x_i u_i) = {\sum}_{i=1}^{n} x_i f(u_i) = {\sum}_{i=1}^{n} x_i ({\sum}_{j=1}^{m} r_{ij} v_j) = {\sum}_{j=1}^{m} ({\sum}_{i=1}^{n} x_i r_{ij}) v_j = {\sum}_{j=1}^{m} y_j v_j に対して、 n \times m行列 A = (r_{ij}) 1 \times n行列(行ベクトル) X = (x_i) 1 \times m行列 Y = (y_j)とすれば、 Y=XAとなります。よく見る形とは縦横が逆ですが、 Rが可換ならば Y ^t = (XA) ^t = A ^t X ^tとすれば(もしくは最初から右加群で考えれば)見知った形にできます。

準同型の合成も行列によって得られます(T1.3)。 R自由加群 E, F, Gの有限な順序つき基底 U, V, Wを固定して、加群準同型 E \overset{f}{\to} F F \overset{g}{\to} G U, Vおよび V, Wに対して A \in \mathrm{Mat}_{np} R, B \in \mathrm{Mat}_{pm} Rと書けるとき、 U, Wに対する合成射 gfの行列は計算すると ABとなります。
自己準同型 \mathrm{Hom}_R (E,E)を考えると、これは合成を積とみなすことで通常の和と併せて単位的環になります。このとき \mathrm{Hom}_R (E,E)と正方行列の環 \mathrm{Mat}_{nn} Rは同一視できる(T1.4)のですが、積の順番が入れ替わってるために少し手間をかける必要があります。
まず、2つの環 S, Tの間の反同型 \theta : S \to Tを、アーベル群の同型で \theta(s_1 s_2) = \theta(s_2)\theta(s_1)となるものとします。すると \mathrm{Hom}_R (E,E) \to \mathrm{Mat}_{nn} Rは反同型です。これを単に同型な関係に言い換えるために、環 Rの反対環 R ^{op}を台集合と加法は Rと同じで積が a \circ b = baとなるものとして定義します。明らかに R ^{op} Rと反同型です。特に Rが可換の場合 R = R ^{op}です。
このとき、合成 \mathrm{Hom}_R (E,E) \to \mathrm{Mat}_{nn} R \overset{- ^t}{\to}  \mathrm{Mat}_{nn} (R ^{op})を考えると、これは環の同型となります。反対環は元の環が{単位的|可除}ならばその性質を引き継ぐので、有限次元ベクトル空間でも同様の定理が成り立ちます。


去年の最後のほうの写経マシンになってた後遺症がまだ残ってて、最初から文量が多めになっちゃいました。まだそんなに難しい話は出てきてないはずなんですけど、それでもこうやって文に起こすと負荷が大きいですね…何とか完走したいですが…。

明日も頑張ります。

*1:これは可換性を意味しているのではない

*2:不変次元性を持つとは限らないのでこんな言い方になる