Hungerford7章読む(12/6)
これは「今年中にHungerford7章読むぞ Advent Calendar 2022」5日目の記事です。
昨日は寝てました。一日40時間くらい欲しい…。どこかで取り返せたらいいですね。
D2.2で導入された行階数・列階数が等しいことを示します(C2.5)。えいえいおー
T2.3で行列の階数は対応する準同型の階数と等しいことを、P1.10で準同型の行列は双対な準同型の行列になることをすでに知ってるので、まず準同型の階数から攻めていくようです。P2.4は、可除環上の有限次元ベクトル空間間の準同型の階数が双対写像の階数と等しいと言っています。これは4章の範囲ですね。階数・退化次数の定理(C4.2.14)よりの基底を具体的に置いての基底を計算すると、T4.2.4によりの基底をの基底に適当に元を加えることで作ることができます。双対写像をT4.4.11(ii)を見ながら作ってその像を計算すると、もとの写像の像に移るの基底の双対が現れるので証明できます*1。
もうC2.5はほとんどできたようなものです。先に行列が与えられている状況なので、標準的な順序付き基底によって、準同型を構築してP2.4に帰着します。
正直モチベーションが下がりつつあり、1記事あたりのボリュームにも表れてますね。
明日も頑張ります。
*1:めんどくさがって文字で書くから余計に意味不明になってしまった…
Hungerford7章読む(12/4)
これは「今年中にHungerford7章読むぞ Advent Calendar 2022」4日目の記事です。
まあアドベントカレンダーの記事ですって書いてるけど、Adventarには登録してない(というか削除した)んですが…
7.2節では対等*1な行列について、成分の環が可除環や主イデアル整域のときに調べていくようです。また、対等な行列のいい感じの形(標準形)が得られます。この辺は、2章の有限生成アーベル群の表示を得たときにその直和分解を計算するところでちらっと出てきたので印象的でした。
T4.2.1により、単位的環の自由加群は(のコピー)の直和と同型でした。ここまで個の要素からなる順序付き基底を持つ自由加群に対してその(行)ベクトルを考えたりしてましたが、に対して標準的な順序付き基底をと定義します。左加群準同型の標準的な順序付き基底に対する行列を考えると、の行ベクトルで生成される左加群の部分加群を行空間といい、これはと同型になります。左右を取り換えると、の列ベクトルで生成される右加群の部分加群を列空間といいます(D2.2)。
以降しばらくは可除環上の行列を考えます。
可除環上の自由加群(ベクトル空間)には次元が定まります。線形写像について、やの次元として階数(rank)と退化次数(nullity)が定義されます(D2.1)。D2.2で定めた行空間や列空間の次元のことを行階数・列階数といいます。この時、左加群準同型の像がその行列の行空間と同型なことから、準同型の階数と行列の行階数が等しいことがわかります(T2.3)。
あまり進んでいませんがぼんやりしてたら24時を優に超えてる(今日起きたのが19時)のでここで終わります。
アドカレやると一日の進みが早くなる…というか他に何もできなくなる(これさえやっとけば一日頑張った気になるので他のやる気がなくなる)しやめたほうがよかったかも…
明日も頑張ります。
*1:前までは同値と書いてたけど同値関係と混同するので…
Hungerford7章読む(12/3)
これは「今年中にHungerford7章読むぞ Advent Calendar 2022」3日目の記事です。
超眠い。
1日目の記事で、準同型の行列が行ベクトルに右から作用する形になっていることについて「よく見る形とは縦横が逆ですが」と文句を書きましたが、どうやら7.1節の残りはそのことを議論するようです。
(非可換)環について、今まで左加群を考えてた*1ところを右加群にしてみようという感じです。このとき、基底が個の要素を持つ自由右加群から基底が個の要素を持つ自由右加群への準同型は、行列(列ベクトル)に行列を左から作用させて行列を得ることに対応します。
このときT1.2~T1.4の対応物がT1.9(i)~(iii)で示されています。特に可換環のときは単に転置を取ればいいですね。T1.4で反同型とかいうめんどくさいのを考えましたが、今回は関数の合成と行列の積で順番が逆転しないので素直に同型です。
1節の最後は双対加群の間の準同型を考えます。基底が個の要素を持つ自由左加群から基底が個の要素を持つ自由左加群への準同型のに対する行列が、双対右加群の間の準同型の双対基底に対する行列にもなるということらしいです。特にが可換環ならば、上でもやったように転置を取ることで加群の左右を揃えて、は双対左加群の間の準同型になります。
証明は、基底が有限なので具体的に双対基底を取ってきて双対加群を作れる(T4.4.11)ので、計算すればいいです。
おっ1節が終わった、いいペースですね(24時をまたぎながら)。
明日も頑張ります。
*1:私は手抜きしてたのでちゃんと明示してなかった気がするけど…
Hungerford7章読む(12/2)
これは「今年中にHungerford7章読むぞ Advent Calendar 2022」2日目の記事です。
前回も書きましたが、単位的環上の自由加群の間の準同型に対する行列を得るには順序付けられた基底の選択が重要でした。つまり同じ準同型から異なる行列が得られうるのですが、T1.6はそのような行列の間にどのような関係があるのかが調べられています。
その準備として、L1.5では逆行列が存在する必要十分条件がある同型の行列となることを証明しています。T1.3によって合成写像が行列積と対応することと、T1.2から同じ基底の間での恒等写像に対応する行列が単位行列を用いてやればよさそうです。
さて、T1.6です。単位的環上の自由加群がそれぞれ有限の順序付き基底を持ち、これらに対するの行列がとします。この時、が異なる順序付き基底に対するを持つことと、可逆行列が存在してとなることが同値です。今回も環が次元不変とは限らなくても言いたいからか言い回しが難しいですね。
特に自己準同型で、の行列が始域と終域の基底に同じものを取ったのとき、異なる基底に対するの行列が存在することはとなるが存在することと同値です(C1.7)。T1.6のような行列の関係を同値、C1.7のような関係を相似といいます。ちょっと言い方がややこしいですが、同値関係や相似関係は同値関係です。
の証明で一部だけ特に説明が無かったところをメモします。の順序付き基底として、同型のに関する行列をとします。このときがの順序付き基底になるのはが同型なことから大丈夫そうです。恒等写像の順序付き基底とに関する行列は、となるですが、これはのことです。ベクトルを動かすことは基底を反対方向に動かすことと同じだということですね。
一般の(単位的)環を考えてるので微妙に一般化されていますが、まあ今のところは見知った線形代数ですね。
明日も頑張ります。
Hungerford7章読む(12/1)
これは「今年中にHungerford7章読むぞ Advent Calendar 2022」1日目の記事です。
昨年に続いて今年もやっていきます。本当は5章にしたかったのですが、明らかに1ヶ月で読める分量ではないのでやめました。7章は「線形代数」と一応馴染みがある(はずの)範囲なのでこれならいけるでしょう、多分…。
誰も見ないのはわかった上で一応書いておきますが、これは私の勉強のモチベ維持のための個人的な記録であり、勝手な(誤りの含む)記述や書き換えが含まれるため、絶対に参考にしないでください。
線形代数ということで行列がメインだと思われますが、序文を読むとベクトル空間間の線形写像だけじゃなくて自由加群間の準同型も射程に入っているようです。せいぜい複素数の行列しかしらないので怖いですね。
T1.1までで行列の定義とその演算について述べられています。すなわち、環上の行列をの元が縦に行・横に列のテーブル状に並べたものとして、が成分ごとの和と各成分へのスカラー倍によって加群*1となること、行列と行列の行列積が結合的かつ和に対して分配法則が成り立つこと(すなわちはこの和と積によって環となること)を言っています。
以降、行列を(単位的)自由加群の間の準同型として考察するので、環は単位的です。
T1.2によって、は要素個の基底*2の自由加群から要素個の基底の自由加群への準同型と同一視されます。
によるの基底の行先をの基底で書くと、という風にして一意にが得られます。これを並べると行列が得られます。計算によりこの割り当てがアーベル群準同型であること、自由加群の性質により基底の行先がを決定することを考えれば全単射であること(単射は零行列を考える)がわかります(アーベル群として同型)。特にが可換環のとき、がによって加群になり、加群として同型になります。
行列の決定には基底の順序も用いられていることに注意します。
T1.2によって準同型の計算は行列積に置き換えることができます: に対して、行列、行列(行ベクトル)、行列とすれば、となります。よく見る形とは縦横が逆ですが、が可換ならばとすれば(もしくは最初から右加群で考えれば)見知った形にできます。
準同型の合成も行列によって得られます(T1.3)。自由加群の有限な順序つき基底を固定して、加群準同型とがおよびに対してと書けるとき、に対する合成射の行列は計算するととなります。
自己準同型を考えると、これは合成を積とみなすことで通常の和と併せて単位的環になります。このときと正方行列の環は同一視できる(T1.4)のですが、積の順番が入れ替わってるために少し手間をかける必要があります。
まず、2つの環の間の反同型を、アーベル群の同型でとなるものとします。するとは反同型です。これを単に同型な関係に言い換えるために、環の反対環を台集合と加法はと同じで積がとなるものとして定義します。明らかにはと反同型です。特にが可換の場合です。
このとき、合成を考えると、これは環の同型となります。反対環は元の環が{単位的|可除}ならばその性質を引き継ぐので、有限次元ベクトル空間でも同様の定理が成り立ちます。
去年の最後のほうの写経マシンになってた後遺症がまだ残ってて、最初から文量が多めになっちゃいました。まだそんなに難しい話は出てきてないはずなんですけど、それでもこうやって文に起こすと負荷が大きいですね…何とか完走したいですが…。
明日も頑張ります。
Homのテンソル積と、テンソル積間のHomの違いについて
Hungerford4章読む(12/20)で出た、加群準同型のテンソル積について考えます。そこでは加群に対して、と、の違いが問題となってました。
まず、とすると、からの平衡写像が存在するので、の普遍性からが一意に得られます。この対応が平衡写像になることを確認することで、の普遍性から、アーベル群準同型が得られます。
が自由加群の場合について考察を進めます。自由加群からの写像は基底を与えることで定まるので、の代わりにの基底を用いてを考えます。の代わりは、まずを考えて、自由加群の直和は自由なことから、先と同様にの基底も用いてです(基底からの行先を決めれば平衡写像は定まる)。したがってを考えればいいのですが、これはを調べることに相当します。
基底が有限の場合は、T5.9を2回使うことでが得られ、つまり同型となります。物理で行列のテンソル積を考えることがありますが、これでベクトル空間の元の意味なのか線形写像の意味なのかで不安にならずに済みますね。
基底が無限の場合はどうしましょう。T5.9では直和の入射を使って逆射を構成しているため、同型を言うのは無理そうですが単射ならば、右辺のほうが大きそうなので言えそうな気がします*1。自由加群のテンソル積はT5.12を見ると基底の有限線形和で一意に書けるので、のときそれぞれ基底に展開するとです。このときで定義される準同型の核は0になりそうなので、これで単射であることがいえます。
ここで話が急に変わりますが、を単位的可換環として、の値域がともに代数の場合を考えます。このとき、です。特にが整域ならばは単射になります。したがって関数の積をとして、と同一視することができます。
上の段落で述べたようにこの同一視はでも行えます。線形変換のテンソル積(のほう)は、Wavelet変換や機械学習などの分野で出てきて、そこではとのテンソル積をと「定義」しますが、これはおそらくこういう流れで正当化されるのではないかと思います。
「~を読む」の記事だと間違ってても、「まあ単なる読書録やしな」で済みそうですが、こういう独立した記事だと怒られそうな気がしてすごく怖い。うっかり読んでしまって間違いに気づきましたら優しく指摘して頂けるとうれしいです。
Erdős–Kaplanskiの定理(Hungerford, Ex4.4.12c)
演習4.4.12cがすごく難しかったので記録。
取り合えず主張を書きます。
この演習自体は、の次元が無限次元においてその双対と等しくない()ことを示すもので、どうやらErdős–Kaplanskiの定理というようです。フランス語Wikipediaに記事があるのでGoogle翻訳に感謝しながら読むと、を導く方針のようです。?の部分がわからなかったので他を当たります。
教科書N. Jacobson(1953)を読むと3ページに渡った証明があります。無限基数の性質(HungerfordのT0.8.11)をよく使っています。大まかに書くと以下の流れになります。
の基底をとして、を示す。これはから有限の個を取り出す場合の数と、個の基底にの元を割り当てる場合の数をそれぞれ計算して、さらに(HungerfordのT4.4.11:より)が無限なことに注意するとわかります。
このときから、となる。ならばが得られるので、以後はの証明を考える。これはならば明らかなので、を仮定する。
の線形独立な元(すなわちの要素)が個以上とれることを証明したい。の双対として、個の基底を固定する。個のをと書くと、これらの線形独立性を行列の非特異性に言い換えることができる。そのため、次のような性質を持つ集合を考える:
が非特異(これをstrongly independentな列の集合と呼ぶ)。すると線形独立なの集合がstrongly independentな列の集合から得られるので、を証明すればいいことがわかる。の証明の大まかな流れは以下。strongly independentな列の集合の集合を考え、これに包含による半順序を入れる。鎖の和集合もstrongly independentなのでZornの補題によりの極大元が存在する。このについてとしたとき、でがstrongly independentとなるものが作れて、極大性に矛盾することを言えばよい。
無限列の構成はの要素数についての帰納法によって行います。すなわち、任意のに対してから長さの列を取ってきて、から得られる任意の行列が非特異にできることを調べます。
まずのときは、とすればから非特異な行列を作れることは明らかです。次にある個のの元を取ってきて、に対してから得られる任意の行列が非特異であることを仮定したときに、から得られる任意の行列が非特異であることを証明すればいいです。
行列の特異性は行や列の並び替えによって変わらないので、次の形の行列について考えればいいです:
ここではから得られた(非特異)行列です。したがってはの行ベクトルの線形結合で表されます。この(唯一に定まる)係数をとすると、であれば上の行列は非特異になるそうです*1。
ここでおよびの選び方を考えると、まずからを選び、その後からを選ぶので、通り*2あります。これは有限かになるので、前者ならば(2で仮定)、後者ならば(4で背理法の仮定)より、はこの場合の数よりも大きいことがわかります。
およびを与えると、として望ましくないが1つ定まりますが、あらゆる選び方によってを求めた集合の要素数はより小さいため、補集合からを取ることで、任意の上の行列は非特異になります。
長かったですね。疲れた…
ところで検索をしていくと、https://arxiv.org/abs/2010.01983という論文で、別の証明方法が与えられているのを見つけました。アブストに「more natural and much easier」と書いているので期待が持てますね*3。読んでいきます。
arxiv:2010.01983では次の定理の系としてE-K定理を証明しています:
この定理でとしてを考えると、よりかつなので、直ちにが得られます。では証明を見ていきます。
体は少なくとも2つの元を持つことから、がわかります。すなわち以下ではを示すことを考えます。
なので、。したがってとの場合を考えれば十分。ここでの場合を考えると、Jacobsonの証明の手順1と同様にして、は基底から有限の個を取り出す場合の数と個の基底にの元を割り当てる場合の数の積ですが、のときこの場合の数はにはならないので、これでOKです。
の場合を考えます。まず仮定を思い出すと、がわかります。したがってを証明すればいいことがわかります。
これはJacobsonの証明の手順2とよく似ていますね。実際、以降の証明はJacobsonとかなり似た手順を踏むのですが、すでに体の列が見えているので、Jacobsonの手順3で出る行列の動機が少しは自然に見えるような見えないような…。さらに有限和を考えるために複雑になっていた行列の性質が単純になっていることがわかります。これによって次のような単純化が行えます。の部分集合(部分加群)を考えて、が線形独立なことを証明すればよい。この時、です。
が線形独立
3段落目は、雑に言うとかつならばということをやってます。また(→)が成立しないことに注意します。
3段落目
この左辺はヴァンデルモンドの行列式であり、と計算されます。これは(が相異なるため)0でないことがすぐわかり、が線形独立であることが示されました。
…こちらも議論が単純化されたとは言え中々の分量でしたね…。たいへんでした(小並感)。ただ、演習4.4.12cと見比べるとこちらが想定解っぽいですね。ヒントとしてくらいあったら出来る人なら出来る…のかな…
両方の証明を見比べると、まあ考え自体は同じで、部分空間の行列の特異性を用いて次元を(下から)評価していますね。Hungerfordの5章はもうしばらく進められてませんが、体を拡大したときの相対的な次元が重要そうだったので、今後こういうテクニックが出てくるのでしょうか。