Hungerford5章読む(2)

全くやりたくないけど1日坊主はさすがにあれなので…と思ってたら2日ほど寝て過ごしてました。しかも序盤なのに盛大に詰まって…もうだめですね


T1.3は体 K上で生成された環が多項式環となることを言っています…が、証明のほとんどが演習になってますね…。(vi)を見るとまあ生成群の証明(T1.2.8)と同じですね。すなわち、多項式の集合 E K \cup Xを含む環になることから、生成環 K \lbrack X \rbrackの最小性より K \lbrack X \rbrack \subset Eが言えて、 K Xを含む任意の環は Eを含むので E \subset K \lbrack X \rbrackとしています。
後半はいまいちピンと来てなかったけど、 f ( u_1 , ... , u_n ) \in Eは展開すると k_1 ( u_1 ^{m_1} ... u_n ^{m_n})+...で、有限個の u_iの積に k_jで重みを付けた有限和(なので K \lbrack X \rbrack Eの元をすべて含む)だからやっぱりやってることは群のときと一緒なんですよね…。(vii)は、もし生成集合が無限集合でも、その元は有限個の生成元しか持たないということでしょう。

 K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrack が生成元の順序に依らないことは和や積が可換なことに対応しそうです。 K \lbrack u_1 , ... , u _{n-1} \rbrack K \lbrack u_n \rbrack = K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrack は、C3.5.7と関連付けると、 K \lbrack x_1 , ... , x _{n-1} \rbrack K \lbrack x_n \rbrack \overset{\leftarrow i}{\underset{j \rightarrow}{\cong}} K \lbrack x_1 , ... , x_n \rbrack と、それぞれT3.5.5を満たすので K \lbrack x_1 , ... , x _{n-1} \rbrack K \lbrack x_n \rbrack \overset{\psi}{\to} S K \lbrack x_1 , ... , x_n \rbrack \overset{\phi}{\to} S \phi = \psi i , \psi = \phi jとなり、 i jも全(単)射なので \mathrm{Im} \psi = \mathrm{Im} \phiで導出できそう?
(20220702:なんか難しいことを書いてるけど、積が結合的だから (a x_1^{k_1} ... x_{n-1}^{k_{n-1}}) x_n^{k_n} = a x_1^{k_1} ... x_{n-1}^{k_{n-1}} x_n^{k_n}でいいのでは…ってなってきた。
ところで、(1)でも書いたように具体的な表示を持ち出すまでもなくこれらは証明できそうですよね…。前者は生成集合の順番が変わるだけですし。後者はちょっと複雑ですが、 K \lbrack u_1 , ... , u _{n-1} \rbrack K \lbrack u_n \rbrackは明らかに u_1 , ... ,u_n Kを含むので K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrackの最小性から K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrack \subset K \lbrack u_1 , ... , u _{n-1} \rbrack K \lbrack u_n \rbrackが言えて、同様に K \lbrack u_1 , ... , u_{n-1} \rbrack \subset K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrack \lbrace u_n \rbrace \subset K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrackから K \lbrack u_1 , ... , u _{n-1} \rbrack K \lbrack u_n \rbrack \subset K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrack。)

次に体の合成という概念が登場します。 Fの部分体 L, Mの合成 LM L \cup Mが生成する体なので、定義より L(M) = LM = M(L) =MLです。 L \cap Mのある部分体 Kについて \exists S \subset M, M = K(S)が成り立つ時、 LM = L(M) = L(K(S)) = (LK)S = L(S)となります*1。有限個の部分体 E_1 , ... , E_n の合成は E_1 \cup ... \cup E_n が生成する体で、 E_1 ... E_n  = E_1 ( E_2 ( ... ( E_{n-1} ( E_n ) ) ... )は…これは定義に従って順番にやれば明らかでは?演習4.1.5になってるけど…。

 K \subset Fの中間体 L, Mについて、次元 \lbrack LM : K \rbrackはT1.2より \lbrack LM : M \rbrack \lbrack M : K \rbrack = \lbrack LM : L \rbrack \lbrack L : K \rbrackと等しくなります。 \lbrack LM : K \rbrackが有限のときは \lbrack M : K \rbrack \lbrack L : K \rbrackも(T1.2より)有限で、 \lbrack M : K \rbrack \lbrack L : K \rbrackの公倍数となり、T4.2.1とT4.2.7より適当な基底を定めて計算すれば \lbrack LM : K \rbrack \leq \lbrack M : K \rbrack \lbrack L : K \rbrackが言えるので*2 LCM( \lbrack M : K \rbrack ,  \lbrack L : K \rbrack ) \leq \lbrack LM : K \rbrack \leq \lbrack M : K \rbrack \lbrack L : K \rbrackが得られます。この不等式は( \lbrack LM : K \rbrackが有限の代わりに) \lbrack M : K \rbrack \lbrack L : K \rbrackがともに有限であるときも成立します。なぜならこの時も上のように L,Mの基底を定めて計算することができてやはり \lbrack LM : K \rbrackを有限に抑えることができるからです*3

ここからさらに怪しくなります…(演習4.1.21の話)。
(有限のときに) L, M K以外の非自明な共通部分を持つ時、それが L Mの基底に含まれるように基底を構成すると \lbrack LM : K \rbrack \neq \lbrack M : K \rbrack \lbrack L : K \rbrackになるので、対偶より \lbrack LM : K \rbrack = \lbrack M : K \rbrack \lbrack L : K \rbrack \Rightarrow L \cap M = Kとなります。逆は成り立たず、すなわち2つの体が自明な交差しかもたない(trivial intersection)であってもそれらが線形無関係(linearly disjoint)でない場合があります(参考:abstract algebra - Degree of composite field - Mathematics Stack Exchange)。すでに上の議論から \lbrack L : K \rbrack , \lbrack M : K \rbrack が互いに素ならば線形無関係になることがわかりますね。
逆が成立する別の条件として、例えば \lbrack M : K \rbrack = 2の場合も自明な交差をもつ L , Mが線形無関係になります。つまり Kの要素ではない Lの基底 l_1 , ... , l_n Mの基底 m_1 , m_2の積は線形独立です。イメージとしてはある点を通る直線は紙にいくらでも引くことができますが線形独立な直線は高々2本しかないということでしょうか。では証明(案)を書きます。 k_{11} m_1 l_1 + ... + k_{1n} m_1 l_n + k_{21} m_2 l_1 + ... + k_{2n} m_2 l_n = 0を考えるのですが、まず m_2で全体を割ってみます。基底は線形独立なので m_1 ( m_2 ) ^{-1} = m Kの元にはならず、 l = k_{21} l_1 + ... + k_{2n} l_n \in L m l_i \notin Lによって k_{11} m l_1 + ... + k_{1n} m l_n + l = 0と簡略化されます。 k_{11} m l_1 + ... + k_{1n} m l_n \neq 0とするとこれは lは明らかに線形独立なのでいずれにせよ l=0 k_{11} m l_1 + ... + k_{1n} m l_n = 0については mで括れば言えそうですね*4


めちゃくちゃ雑にやってるのに全然進まないくてつらい。

*1:最後から二番目の等号は雑に書いたけど、 L \cup K \cup Sが生成する体と思っていけないかな…前回や前段落でごまかしたのも似たところですね

*2:多分

*3:実はこの段落の話は演習4.1.20なのだが、そこでは[LM:K]が有限 iff [L:K]と[M:K]が有限を最初に示してから不等式を示しているので違う方法がある?

*4:たのむ

Hungerford5章読む(1)

本日2022/4/17は2022年アドベントカレンダーの-228日目になります(2022/11/30を-1日目とする)。4/20からにするとちょうど225=25*9なのでアドカレ9回分とキリがいいのですが、そうやって延期すると一生やらないことを私はよく知ってるので、正直眠たいですが思い立った今からやります。


5章はガロア理論です。数年前に数学科出身の人に「数学をやるならガロアが(楽しいから)おすすめだよ」的なことを言われたので気にはなってたんですよね…気合と根性がなくて先延ばしにしていました。

とりあえず序文を眺めていますが、「体Fを特定の体Kの拡大として考える」「代数拡大・超越拡大があって、超越拡大は6章でやる(そこまで読む日は来るのか?」「ガロア理論は体の拡大 K \subset Fガロア群とかいう、Kの要素を固定する(Kへの制限が恒等になる?)Fの同型写像の群に関連づける」「それによって体の問題を群論に帰着する」…とのことです。まあ5章が終わったころには理解してることでしょう。


とりあえずT1.3の前まで眺めてみました。

体の拡大というとえらそうですが、単に部分体がKとなる体Fを取ってくることなんですね。群と同様に積の単位元は拡大で保存します。環はその部分環を係数とした加群とみなせるので、K上の加群Fを考え、その次元を \lbrack F : K \rbrackと書きます。この書き方について、T1.2で次元の積を計算していますが、T4.2.16を読んだときにメモしていた、部分環を係数としたベクトル空間の次元は群の指数とみなせそうな話がはっきり形として現れましたね。

次に X \subset Fが生成する部分体や部分環を考えます。特に、 K \subset E \subset Fとなる中間体 Eとなるような場合として、 K \cup Xが生成するときに K上で Xが生成する部分体(部分環)を考え、 K(X) K \lbrack X \rbrack)と書きます。生成集合が有限のとき Kの有限生成拡大といい、生成集合が一点集合のときは単純拡大と言うそうです。 K \lbrack X \rbrackは体 Fの部分環なので整域になります。

T1.3で K(X) K \lbrack X \rbrackの構造を調べていきますが、それは次回に回します。 K ( u_1 , ... , u_n ) K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrack)が生成元の順序に依らないことや、 K ( u_1 , ... , u_{n-1} ) ( u_n ) = K ( u_1 , ... , u_n ) K \lbrack u_1 , ... , u_{n-1} \rbrack \lbrack u_n \rbrack = K \lbrack u_1 , ... , u_n \rbrack)なことは、定義や \cupが結合的なこととかでほとんど自明に成り立ちそうですが、T1.3を見てからもう一度考えてみます。

3章でイデアルの生成は出てたにも関わらず環の生成はなかったのが気になっていました。T1.3をちらっと見た感じ、生成環は有限個の不定元を持つ多項式環の元に Xの元を代入したものっぽい? \mathbb{N} ^n \rightarrow Kじゃなくて演習3.5.4のように ( X \rightarrow \mathbb{N} ) \rightarrow Kとできそうだけどどのみち不定元の数は有限個なので nを動かしたら一緒か。可換環 Rの部分集合 Xが生成する環は、 0 \lbrack X \rbrackだと零環になってしまいそうなので 1 \lbrack X \rbrackになるんでしょうか?(20220630追記:すべての単位的環は整数環を部分環にもつから \mathbb{Z} \lbrack X \rbrack。)というかD3.1.5を見たら零体なるものはないんですね(体は1を必ず持つ)。単位的でない環の場合は単位元についてはT3.5.2辺りのように単位元を付与してから適切に部分環を取る?


書き始めたのが4/17の0時辺りで投稿がこの時間になったあたり、明日にでも挫折してそうですが、がんばります。

Hungerford4章読む(1/2)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」25日目の記事ではありません。2022年ですね。さあ延長戦の始まりだ


4.7節のタイトルは「ALGEBRAS」…本のタイトル「Algebra」を回収した感じで熱いですね。日本語では「代数」よりも「(結合的)多元環」と言うようです。

多元環の定義7.1を読みます。単位的可換環 Kに対して K代数とは、環 Aについて、 (A , +)が単位的(左*1 K加群であって、左作用と環の積が両立 k(ab)=(ka)b=a(kb)するものです。特に Aが可除環のとき、 K代数 Aを可除代数と言います。

定義を見てもよくわからないので例を見ていきます。
まず簡単な例として環 R \mathbb{Z}加群であり整数倍について考えると確かに \mathbb{Z}代数です(20220701追記:このときD7.1の二番目の条件が環の分配法則みたいになる)。他にも単位的可換環 K上の多項式環やべき級数の環、あと要素が Kの元となる n \times n行列の環は、まあ K代数でしょう。
少し捻った例として、体 F上のベクトル空間 Vについて、自己準同型の集合 \mathrm{Hom}_{F} (V,V)は和を (f + g)(a)=f(a)+g(a)、積は関数の合成として環であり、 Fの作用に関して考えると F代数になります。このように体上のベクトル空間に多元環の構造を与えたもので、特に有限次元のものを有限次元代数と言うそうです。
さらに凝った例として、(乗法的)群 G可換環 Kとして群環 K(G)={\sum}_{g \in G} K K代数であり、 K上の Gの群代数と言います。群環の元は K(G) \ni {k_g}_{gh \in G} := k_{g_1} g_1 + ... + k_{g_n} g_n = {\sum}_{i=1}^n k_{g_i} g_iという有限の形式和で定義されていて、和 {\sum}_{i=1}^n k_i g_i + {\sum}_{i=1}^n r_i g_i = {\sum}_{i=1}^n (k_i + r_i) g_iと積 ({\sum}_{i=1}^n k_i g_i )({\sum}_{j=1}^m r_j h_j ) = {\sum}_{i=1}^n {\sum}_{j=1}^m (k_i r_j)(g_i h_j)単位元 1_K eによって単位的環でした。 K加群の構造は作用 k({\sum} r_i g_i ) = {\sum} (k r_i )g_iで得られて、可換性により作用と群の積が両立します。
複素数体 \mathbb{C}や実四元数の(可除)環は実数体 \mathbb{R}上の可除代数です。

最初の例で環 R \mathbb{Z}代数だと書きました。写像 R {\otimes}_{mathbb{Z}} R \to R , r \otimes s \mapsto rsはアーベル群の準同型です。整数倍 n(r \otimes s) = nr \otimes s = r \otimes nsと先の準同型の関係 n(r \otimes s) \mapsto n(rs) , nr \otimes s \mapsto (nr)s , r \otimes ns \mapsto r(ns)多元環における作用と環の積の両立に対応することがわかります。逆に、このようなテンソル積からの写像を用いて多元環の特徴づけにすることができます(T7.2)。
単位的可換環 Kと単位的 K加群 Aについて、 A K代数であることは、 K加群準同型 \pi : A {\otimes}_K A \to Aについて A {\otimes}_K A {\otimes}_K A \stackrel{\pi \otimes 1_A}{\to} A {\otimes}_K A \stackrel{\pi}{\to} A A {\otimes}_K A {\otimes}_K A \stackrel{1_A \otimes \pi}{\to} A {\otimes}_K A \stackrel{\pi}{\to} Aが可換になる*2ことと同値になります。さらに K代数 A単位元をもつことは、 K加群準同型 I: K \to Aについて、 K {\otimes}_K A \stackrel{T5.7の同型}{\to} A \stackrel{1_A}{\to} A K {\otimes}_K A \stackrel{I \otimes 1_A}{\to} A {\otimes}_K A \stackrel{\pi}{\to} A、同様に A {\otimes}_K K \stackrel{T5.7の同型}{\to} A \stackrel{1_A}{\to} A A {\otimes}_K K \stackrel{1_A \otimes I}{\to} A {\otimes}_K A \stackrel{\pi}{\to} Aが可換になる*3ことと同値になります。このような \piを積写像 Iを単位写像と言います。
 \Rightarrowテンソル積からの写像なのでテンソル積の普遍性(T5.6)から考えます。すなわち K双線形写像 A \times A \to A , (a,b) \mapsto abから積写像 \pi : A {\otimes}_K A \to Aを定義すると、どちらの順でも a \otimes b \otimes c \mapsto abcになります。積の単位元 1_A \in Aとなる*4とき、単位写像 I : K \to A , k \mapsto k 1_Aとすると、これは加群準同型でどちらの順でも k \otimes a \mapsto ka , a \otimes k \mapsto ak = kaとなります。
 \Leftarrow)可換図式を満たす積写像 \pi : A {\otimes}_K A \to A , \pi (a \otimes b) = abとすると、上の例で見たように k(ab) = \pi (k(a \otimes b) ) = \pi (ka \otimes b) = (ka)b = \pi (a \otimes kb) = a(kb)が得られます。同様に可換図式を満たす単位写像 I : K \to Aとすると、 I(1_K)a = 1_K a = aより A \ni I(1_K) = 1_Aとなります。

D7.3で多元環の用語をいくつか導入します。 K代数 Aの部分代数を、 Aの部分環でありかつ K部分加群であるものと定義します。次に K代数 Aイデアル(代数イデアル)を環 Aイデアルでかつ K部分加群であることとします。 K代数の準同型を環準同型であってかつ K加群準同型であるものとします。
多元環の環の意味でのイデアルが代数イデアルになるとは限りません。例えば \mathbb{Q}ベクトル空間 A = \mathbb{Q} a ab=0で環の構造を与えると \mathbb{Q}代数になります。 Aの真部分群は環のイデアルですが、スカラー \mathbb{Q} \times A \to Aが閉じないため \mathbb{Q}代数になりません。しかし Aが積の単位元 1_Aを持つ(そのような積を与えた)とき、環のイデアルは代数イデアルにもなります; k \in K , k 1_A \in Aよりイデアル Jについて kJ = k(1_A )J \subset J
代数イデアル Iによる Aの剰余代数や K代数の族の直積や直和は、剰余環や環の直積・直和と同じように考えればよさそうです。

テンソル積は代数を構築するのに使われるそうです。そのことを証明するために、加群の同型 A {\otimes}_K B \stackrel{\alpha}{\cong} B {\otimes}_K A , \alpha(a \otimes b) = b \otimes aを確認します。まず双線形写像 (a,b) \mapsto b \otimes aから群準同型 \alphaを誘導し、これがスカラー r(a \otimes b) = (ra \otimes b) \mapsto (b \otimes ra) = r (b \otimes a)によって加群の準同型になることを確認すれば、逆写像は簡単に作れるのでよさそうです。
ではT7.4を見ます。これは K代数 A,Bについて \piを以下の関数の合成で定義します; (A {\otimes}_K B) {\otimes}_K (A {\otimes}_K B) \stackrel{1_A \otimes \alpha \otimes 1_A}{\to} (A {\otimes}_K A) {\otimes}_K (B {\otimes}_K B) \stackrel{ {\pi}_A \otimes {\pi}_B }{\to} A {\otimes}_K B。ここで {\pi}_{-} A,Bの積写像とします。 A {\otimes}_K B K代数となり、この \piは積写像です。
前半の写像 (A {\otimes}_K B) {\otimes}_K (A {\otimes}_K B) \stackrel{T5.8}{\cong} A {\otimes}_K (B {\otimes}_K A) {\otimes}_K B \stackrel{1_A \otimes \alpha \otimes 1_B}{\cong} A {\otimes}_K A {\otimes}_K B {\otimes}_K Bということだと思います。写像テンソル積はT5.5で定義されています。 A {\otimes}_K Bの生成元について考えると、積写像は具体的に (a \otimes b)(a_1 \otimes b_1) = \pi (a \otimes b \otimes a_1 \otimes b_1) = a a_1 \otimes b b_1となり、可換図式を満たしそうです。積の単位元 1_A \in A , 1_B \in Bが存在するとき、 I : k \mapsto k(1_A \otimes 1_B)とすればこれが単位写像になり I(1_K) = 1_A \otimes 1_B単位元となります。

ここで定義した K代数のテンソル積を用いて体 K上の可除代数の構造を調べていくようです。9章で(そこまで読む日が来るのか?)


やった~~~~~~~終わった~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!

少しだけ2021年を飛び出しましたが、これで4節「加群」を全て読んだことになります。演習や難しいところを見て見ぬふりしたので理解した気は全くしませんが…。最初のほうは余裕があったのか短くまとめようとして(余計にわかりにくくして)ましたが、後半はただの写経する機械になってしまいました。
次はどうしよう、素直に5章のガロア理論に進むのがいい?あまり沼にはまりたくはないのでほどほどの楽しさが欲しいところなんですが、何かいいのがあればいいな。

もう頑張らなくていいんだ。

*1:可換環なので加群・代数の左右は ka=akで同一視できる

*2:本当は可換図式で書くのですが…

*3:本当は可換図式で書くのですが…2

*4:恒等写像と紛らわしいですね

Hungerford4章読む(12/31)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」25日目の記事です。最終日!


いよいよ6節も大詰めです。T6.6~6.9によって有限生成加群素数のべきの位数の巡回加群に分解しましたが、次に有限生成アーベル群の時と同様にもう1つの分解を得ます。最後にそのような分解がそれぞれ一意であることを見て締めくくります。以降で環 Rは主イデアル整域、加群はすべて単位的です。

L6.10ではそのための道具として、L2.2.5の加群版を導入します。
加群 Aに対して、 rA = \lbrace ra | a \in A \rbrace A \lbrack r \rbrack = \lbrace a \in A | ra = 0 \rbrace Aの部分加群だということは多分簡単にわかりそうです。2.2節との類似を考えると r = p ^n , A = A(p)の場合について、 p ^n A(p)は位数が p ^n以下の直和因子を消す、 A(p) \lbrack p ^n \rbrackは位数 p ^n以下の直和因子を取り出すような使い方をしそうですね。これらは直和 A \cong {\sum}_{i \in I} A_iのとき rA \cong {\sum}_{i \in I} r A_i, A \lbrack r \rbrack \cong {\sum}_{i \in I} A_i \lbrack r \rbrackが成り立ちます。証明は同型写像の制限を考えたらいいのでしょうか。
続いて R/(p)が体であることが、T3.3.4(i)とPIDの非零な素イデアルは極大であること*1とT3.2.20(i)からわかり、さらにその時 A \lbrack p \rbrack R/(p)上のベクトル空間であると書いてます。これは作用について考えれば証明できそうです。
剰余環 R/( p ^n ) R加群でもあります。このとき p ^m (R/(p ^n )) \cong R/(p ^{n-m}) , 0 \leq m \lt n (R/(p ^n )) \lbrack p \rbrack \cong R/(p)が成立します。最初にPIDにおいて剰余環 R/(p ^n ) 1_R + (p ^n )が生成する循環加群となることに注意します。前者の同型は p ^m (R/(p ^n )) p ^m + (p ^n )が生成する巡回加群であることを考えます。 p ^m + (p ^n )の位数が p ^{n-m}なのでT6.4より p ^m (R/(p ^n )) = R(p ^m + (p ^n )) \cong R / (p ^{n-m})です。後者は (R/(p ^n )) \lbrack p \rbrack p ^{n-1} + (p ^n )が生成する巡回加群であることを考えます。一段落前の結果から (R/(p ^n )) \lbrack p \rbrack R/(p)上のベクトル空間、すなわち基底が1つの自由 R/(p)加群となり、 (R/(p ^n )) \lbrack p \rbrack \cong R/(p)です。
 f : A \to B加群の同型のとき、 A_t \cong B_t , A(p) \cong B(p)が成立します。これも(T2.2.5を見ながら)同型の制限を考えると証明できそうです。

L6.11でPID上の位数 rの巡回加群(T6.4により R/(r)と同型になる)の分解を得ます。すなわち r \in Rは(一意に)素元分解 r = p_1 ^{n_1} ... p_k ^{n_k}され、このとき加群の同型 R/(r) \cong R/(p_1 ^{n_1}) \oplus ... \oplus R/(p_k ^{n_k})が存在します。これは互いに素な s,tに対して R/(st) \cong R/(s) \oplus R/(t)が証明できれば、 rの素元分解で出る素元の数に関して帰納法を用いて証明できます。
まず単射 /theta : R \to R , x \mapsto txを考えるとイデアル \theta ( (s) ) = (st)に写ることから、C1.8によって(単射)準同型 R/(s) \to R/(t) , x + (s) \mapsto tx + (st)が誘導されます。同様に R/(t) \to R/(st) , x + (t) \mapsto sx + (st)も得られます。直和の普遍性を考えると \alpha : R/(s) \oplus R/(t) \to R/(st) , (x+(s),y+(t)) \mapsto ts+sy+(st)が一意に得られます。これが同型であればいいですね。実際、 \mathrm{gcd} (s,t)=1_Rより su+tv=1_Rとできて、 R \ni c = suc + tvc , c+(st) = \alpha (vc+(s) , uc+(t))より \alpha全射となることがわかります。単射性は次のようにします*2 \alpha (x+(s) , y+(t))=0 \Rightarrow tx+sy=stb \in (st)を用いて y = 1_R y = (su+tv)y tの式に変形すれば y \in (t)にできます。すなわち utx+usy=ustb , usy = y-tvyから y=ustb-utx+tvy \in (t)です。同様に x \in (s)を得れば \mathrm{Ker} \alphaが自明になることが言えます。

さていよいよ加群の分解定理を得ます(T6.12)。主イデアル整域 R上の有限生成加群 Aについて次の2つの分解が存在します。

  •  Aは有限ランクの自由部分加群 Fと、有限個の巡回トーション加群に分解され、その位数 r_1 , ... , r_t \in R(各 r_iは同じでもいい)は 1_R \neq r_1 | r_2 | ... | r_tを満たします。自由加群 Fのランクと位数イデアル (r_1 ) , ... , (r_t ) Aにより一意に定まります。この位数 r_1 , ... , r_tを不変因子と言います。
  •  Aは有限ランクの自由部分加群 Eと、有限個の巡回トーション加群に分解され、その位数は p_1 ^{s_1} , ... , p_k ^{s_k}(各素元 p_j \in Rと指数 s_j \in \mathbb{Z}は同じでもいい)となります。自由加群 Eのランクと位数イデアル (p_1 ^{s_1}) , ... , (p_k ^{s_k}) Aにより(イデアルの順序を除き)一意に定まります。この p_1 ^{s_1} , ... , p_k ^{s_k}を単因子といいます。

単因子の存在はT6.6~6.9ですでに見ました。アーベル群のときと同様にして不変因子は単因子から計算されます。すなわち不変因子に出現した素元のリスト p_1 , ... , p_kに対して、 n_{ij} , 1 \leq i \leq t , 1 \leq j \leq k 0 \leq n_{1j} \leq ... \leq n_{tj}かつ \exists n_{ij} \neq 0となるように定めます。すると A_t \cong {\sum}_{i=1}^t {\sum}_{j=1}^k R / (p_j ^{n_{ij}}) \cong {\sum}_{i=1}^t R / (r_i)のようにして不変因子が得られます。 T6.6により自由部分加群は分解によらず A/A_tと同型になり、C2.12よりPID上の自由加群のランクは一意に定まります。巡回加群のランクの一意性を示す際には主イデアル整域 Rの既約元分解を用います。整数環の場合は単元が \pm 1ならば素元を正に限定することで一意に元を分解できますが、一般のPIDの場合はそのような限定が難しいので位数イデアルを考えて一意性を主張します。すなわち Z_pの対応物として R/(p)を考えて、 A \lbrack p \rbrack \cong R/(p) \oplus ... \oplus R/(p)の直和因子の数を A \lbrack p \rbrackの体 R/(p)における次元 \mathrm{dim}_{R/(p)} A \lbrack p \rbrackとみなし、その一意性を用います。

最後にC6.13で有限生成加群が同型になる条件を言っています。PID上の2つの有限生成加群 A , Bが同型であることと、 \mathrm{rank} A/A_t = \mathrm{rank} B/B_tかつ A , Bは同じ不変因子(または単因子)を持つことが同値となります。 A, Bそれぞれの分解を与えると、T6.4あたりを使えばいいんでしょうか。


非常につらい1ヶ月でした…。遅れに遅れてクリスマスどころか大晦日になってしまいましたが6節まできれいに終わることができてよかったですね。えっ7節?

まだ頑張らないといけないの…?

*1:これは (p) \subset (a) \Rightarrow (a) \ni p = ra pが素元なことから p | a \ or \ p | rを得て、前者の場合 (a) \subset (p)、後者の場合 r=tp, p=ra=tpa \Rightarrow p(1_R - ta) = 0 \Rightarrow R = (1_R) = (ta) \subset (a) \Rightarrow (a) = Rと導くことで証明できる。

*2: \thetaが誘導した写像 \alpha \iota単射でも \alpha単射とは限らない

Hungerford4章読む(12/28)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」24日目の記事です。今夜はクリスマス~


今日読む3つの定理(T6.6、6.7、6.9)によって主イデアル整域 R上の単位的な有限生成加群 Aの1つ目の分解を得ます。

まず Aがトーション部分加群 A_tと自由 R加群 Fによって A = A_t \oplus Fと分解できます(T6.6)。剰余加群 A / A_tの元と r \neq 0について r(a + A_t) = A_t \Rightarrow ra \in A_t \stackrel{A_tがトーション}{\Rightarrow} \exists r_i \neq 0 , r_1(ra)=0 \Rightarrow a \in Aとなるので A / A_tはトーションフリーです。 A / A_tは( Aと同様に)PID上で有限生成なのでT6.5より有限ランクの自由加群です。自由加群は射影的なのでT3.4より完全列 0 \to A_t \hookrightarrow A \to A/A_t \to 0が分裂して A \cong A_t \oplus A / A_tが得られます。この同型によって A_t A_tに写り、 A / A_tは自然な射影の右逆写像となることから単射 F \subset Aに写ります。自由加群単射像は自由加群になる(と思う。基底からの包含を合成 X \stackrel{\iota}{\hookrightarrow} F' \stackrel{i}{\hookrightarrow} Fで考えて、任意の X \stackrel{f}{\to} Gに対して F \stackrel{i^{-1}}{\to} F' \stackrel{\bar{f}}{\to} Gとできそう)ので Fは有限ランクの自由加群となります。トーション加群と自由加群は0以外の共通部分を持たないので A = A_t \oplus Fが得られます*1
(20220625追記: ここの=の処理についてもう少しまじめに考える。実は一般に、右分裂列 0 \to A \overset{f}{\to} B \overset{g}{\underset{s}{\rightleftarrows}} C \to 0, gs=1_Cから直和分解 B = f(A) \oplus s(C)が得られます。
証明します。直和因子の共通部分から b \in f(A) \cap s(C)をとると、 f単射性から \exists ! a \in A , f(a)=bが、 s単射性から \exists ! c \in C , s(c)=bがとれ、 g(b) = g(f(c))=c。完全性から gf(a) = g(b)=0となり、 b=s(0)=0。次に \forall b \in Bに対して、 g(b)=gsg(b) \Rightarrow g(b-sg(b))=0から、 b-sg(b) \in \mathrm{Ker} g = \mathrm{Im} f = f(A)。さらに sg(b) \in s(C)より B \subset f(A) + s(C)。逆は明らか。
T6.1も同じ形式に取り込めます。左右の分裂列は同値なことはすでにT1.18で見ましたが再考します。左分裂列 0 \to A \overset{f}{\underset{r}{\rightleftarrows}} B \overset{g}{\to} C \to 0, rf=1_Aに対して、 h = 1_B -frとします。 hf=0 \Rightarrow \mathrm{Im} f \subset \mathrm{Ker} hとなるので、準同型定理より \exists ! s : B / \mathrm{Im} f \to \mathrm{Im} hが唯一存在し(余核の普遍性)、これにより右分裂列が得られます。
まとめると、分裂列は以下の形で特徴づけられます: 0 \to A \overset{f}{\underset{r}{\rightleftarrows}} B \overset{g}{\underset{s}{\rightleftarrows}} C \to 0に対し、 rf = 1_A , gs = 1_C , gf = rs = 0 , fr+sg=1_B。前3式が f,s,r,gが直和の入射や直積の射影と対応することをいい、最後の式によって実はこれらによる直和(=直積)とBが(同型よりも強く)等しいことがわかります。 )

T6.7ではトーション部分加群のほうに注目します。 AをPID R上トーション加群として、素元 p \in Rに対して A(p) = \lbrace a \in A | aはpのべきの(加群の意味での)位数をもつ \rbraceとします。このとき A(p) Aの部分加群で、 A A = {\sum}_{p \in R} A(p)と直和分解されます。特に Aが有限生成ならば有限個の A(p)だけが非零となります。これは各生成元は高々有限個の基底の線形和なので、無限個の直和にならないことからすぐわかります。
部分加群であることを言いたいので和と係数環の作用について閉じることを示します(0と逆元は明らか)。 \mathcal{O}_a = (p^r) , \mathcal{O}_b = (p^s)とすると、 k = \mathrm{max}(r,x)を取ってくることで p^k (a+b)=0とできます。T6.4より 0 \leq i \leq k , \mathcal{O}_{a+b} = (p^i)となり a+b \in A(p)が得られます。 Rの可換性から p^i ra = r p^i a = 0となり作用についても閉じているので A(p)は部分加群です。
 0 \neq a \in A , \mathcal{O}_a = (r)を考えます。既約元(素元)分解 r = {p_1}^{n_1} ... {p_k}^{n_k}して、 r_i = {p_1}^{n_1} + ... + {p_{i-1}}^{n_{i-1}} + {p_{i+1}}^{n_{i+1}} + ... + {p_k}^{n_k}とすると \lbrace r_i \rbraceの最大公約元は 1_Rとなります。T3.11より s_1 r_1 + ... + s_k r_k = 1_Rとなる s_iが存在し、 a = 1_R a = s_1 r_1 a + ... + s_k r_k aですが、各項について {p_i}^{n_i} s_i r_i a = s_i r a = 0 \Rightarrow s_i r_i a \in A(p_i)となることから各 A(p)の和が Aを生成することを示すことがわかります。あとは共通部分が0になることを言えばいいです。すなわち A_1 q \neq pが生成する部分加群として A(p) \cap A_1を考察します。 a \in A(p) \cap A_1のとき p ^m a =0かつ a = a_1 + ... + a_t , a_i \in A(q_i)となります。 q_i ^{m_i} a_i = 0から (q_1 ^{m_1} ... q_t ^{m_t})a = da = 0が得られます。この d p(すなわち p ^m)が互いに素なので r p ^m + sd = 1_R、すなわち a = 1_R a = (r p ^m + sd) a
= r (p ^m)a + s(da) = 0です。

 A(p)の性質を考えるためにL6.8を準備します。PID R加群 Aがある素元 p \in R n \in \mathbb{N}に対して p ^n A = 0 \land p ^{n-1} A \neq 0を満たし、 a \in Aの位数 p ^nとします。このとき、 A \neq Raならば 0 \neq b \in A , Ra \cap Rb = 0となります。そのような bを集めることで( A=Raの場合は C=0とすれば) A = Ra \oplus Cと部分加群で直和分解することができます。
証明です。 A \neq Raのとき、 c \in A - Raが存在しますが、 p ^n c \in p ^n A = 0から最小の正整数 j \ s.t. \ p ^j c \in Raが存在します( j=nのとき 0 \in Ra)。つまり p ^j c = r_1 a , r_1 \in Rで、既約元分解より r_1 = r p ^k , k \geq 0 , p \not| rとできるので 0 = p ^n c = p ^{n-j} r p ^k a = r p ^{n-j+k} aとなります。 aの位数 p ^nからT6.4より p ^{n-1} a \neq 0となり、 p \not| rと合わせると n-j+k \geq n \Rightarrow k \geq j \geq 1となります。したがって b = p ^{j-1} c - r p ^{k-1} a \in Aという元を作ることができます(積の逆元の心配がない)。この bについて p ^{j-1} c \in Ra jの最小性)から b \neq 0 pb = p ^j c - r p ^k a = r_1 a - r_1 a = 0が成立します。ここで Ra \cap Rb \neq 0、すなわち s \in R , 0 \neq sb \in Raを仮定します。 pb \neq 0より p \not| sであり、 s p ^nが互いに素なことから sx + p ^n y = 1_Rとできます。 b = 1_R b = sxb + p ^n yb \stackrel{p ^n A = 0}{=} x(sb) \in Raから p ^{j-1} c = b + r p ^{k-1} a \in Raが得られます。これは j-1 \neq 0とすると jの最小性に矛盾し j-1=0とすると c \not\in Raに矛盾するので Ra \cap Rb = 0が導かれました。
後半の証明に向かいます。 A \neq Raの場合を考えばいいです。 Raに対して B , Ra \cap Bとなるような加群の集合 \mathcal{S}を考えます。すでにそのようなものとして Rbが作れることは上で見たので、 \mathcal{S} \neq \emptysetです。 \mathcal{S}を集合の包含による半順序集合として、任意の全順序部分集合に対して上界 Aが存在することからZornによって極大元 Cの存在がわかります。この C Raによって Aが生成されることを見れば証明が終わります。そこで A/Cを考察します。 p ^n A = 0から p ^n (A/C) = 0 , p ^n (a + C) = 0です。 Ra \cap C = 0 , p ^{n-1} a \neq 0より p ^{n-1} (a+C) = p ^{n-1} a+ p ^{n-1} C \neq Cです。よって a+C \in A/Cの位数は p ^nであり、 p ^{n-1} (A/C) \neq 0を得ます。ここで、もし A/C a+Cの巡回加群でない(つまり A/C \neq R(a+C))と仮定すると、前半の定理を援用して d+C \in A/C , d+C \neq C , R(a+C) \cap R(d+C) = Cが得られます(剰余加群なので微妙に形が異なることに注意)。 R(a+C) \cap R(d+C) = C \Rightarrow (Ra+C) \cap (Rd+C) = C \stackrel{Ra \cap C = 0}{\Rightarrow} Ra \cap (Rd+C) + C \cap (Rd+C) = C \Rightarrow Ra \cap (Rd+C) = 0と計算できますが、これは Rd+C \in \mathcal{S}を意味します。 d \not\in Cよりこれは Cの最大性に矛盾します。よって A/C = R(a+C) = Ra+Cとなり、 A=Ra+Cが得られました。
後半部分の別証明が演習として出てきており、 Ra \cong R / ( p ^n ) R / ( p ^n )単射性を用いて分裂列 0 \to Ra \to A \to C \to 0を作るそうですが、見なかったことにします。誘導部分だけ眺めると R / ( p ^n )加群 R加群を相互に言い換えられることを用いて、まず係数環を R / ( p ^n )で考えてから最後の分裂列で Rについて考える流れらしい?

T6.9で A(p)=Aが位数 p ^{n_1} , ... , p ^{n_k} , n_1 \geq ... \geq n_k \geq 1の巡回加群の直和で書けることがわかります。すなわち A(p)はL2.2.5(iii)(アーベル群から Z_{p ^{n_i}}の直和を集めたもの)の類似物と言えます。
証明は Aの生成元の数 rに関する帰納法で行います。 r=1の場合は A(p)の生成元も1つなので明らかです。 r \gt 1として、 Aの生成元 a_1 , ... , a_rの位数を p ^{n_1} , p ^{m_2} , ... , p ^{m_r}とします。並び替えによって n_1 = \mathrm{max} \lbrace n_1 , ... , m_r \rbraceと選べば、 p ^{n_1} A = 0 , p ^{n_1 -1} A \neq 0が得られます。こうするとL6.8が使えて A = R a_1 \oplus Cとできます。自然な全射 \pi : A \to Cを考えると C \pi (a_1) , ... , \pi (a_r)で生成されますが、 \pi (a_1)=0より Cの生成元は a_1を除いた r-1個以下になります。よって Cに対して帰納法の仮定を適用できて、 Cは位数 p ^{n_2} , ... , p ^{n_k} , n_2 \geq ... \geq n_k \neq 1の巡回加群の直和で書けます(この添え字の付け方は証明がきれいになるためで、生成元の位数 p ^{m_2} , ... , p ^{m_r}と直和因子の位数 p ^{n_2} , ... , p ^{n_k}の対応関係は特に考えてないことに注意)。 p ^{n_1} A = 0 \Rightarrow p ^{n_1} C = 0を考えると n_1 \geq n_2が得られます。 R a_1は位数 p ^{n_1}の巡回加群なので、 A=R a_1 \oplus Cは位数 p ^{n_1} , ... , p ^{n_k} , n_1 \geq ... \geq n_k \geq 1の巡回加群の直和で書けることが言えました。

これらを合わせると、PID上の有限生成加群 自由群 \oplus トーション巡回加群の形に書けることが言えます。一意性に関しては続きに書かれているので次回読みます。


あと1日!長くつらかったアドベントカレンダーもようやく終わりそうですね。

明日も頑張ります。

*1:同型から=を導いた部分はT6.1と同じ流れで行けると思うけど…

Hungerford4章読む(12/26)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」23日目の記事です。まだまだまだまだ終わんないよ♫


引き続き(というか6節通して)加群は単位的です。

T6.4では群の要素の位数やアーベル群のトーション部分群の加群版を作っていきます。整域 R上の左加群 Aに対して {\mathcal{O}}_a = \lbrace r \in R | ra = 0 \rbraceとすると、これは Rイデアルであることは可換性に注意すればわかります。この {\mathcal{O}}_aが自明とならない A_t = \lbrace a \in A | {\mathcal{O}}_a \neq 0 \rbraceは、逆元を取った和と Rの作用に関して閉じていることを言えば部分加群です。位数(order)イデアルだからO、トーション(torsion)部分加群だからtなんですね。T1.5の全射 R \to Raの核が {\mathcal{O}}_aであることに注目すると、第一同型定理より R / {\mathcal{O}}_a \cong Raがわかります。
さらに Rが主イデアル整域で p \in Rが素元のときを考えます。 p^{i} a = 0 \Leftrightarrow (p^{i}) \subset {\mathcal{O}}_aとすると、イデアル {\mathcal{O}}_a = (r)に対して r | p^{i} \Rightarrow r = p^{j} u , 0 \leq j \leq iとできます。 uは単元ですが、これは既約元(PIDなので素元と同じ)と単元の積は元の既約元と同伴関係にありやはり既約となることから、既約元で分解するときには単元の自由度が残るからです(T3.2、T3.4、D3.5)。代入して計算を進めると {\mathcal{O}}_a = (r) = (p^{j} u) = (p^{j})が得られます。逆に任意の j \lt iに対して p^{j} a = 0とすると p^{j} \in {\mathcal{O}}_aになりますが、この時 {\mathcal{O}}_a = (p^{i})とすると p^{i} | p^{j}となり矛盾するので、 {\mathcal{O}}_a \neq (p^{i})になります。

例が2つあるので見ていきます。
イデアル整域 R , r \in Rとすると、 R自身が 1_Rから生成される巡回 R加群であることを思い出せば R / (r) a = 1_R + (r)から生成される巡回加群です。この aの位数イデアル {\mathcal{O}}_a = (r)ですが、このとき aの位数を r Ra = R / (r)は位数 rの巡回加群と言います。逆に任意のPID上の巡回加群はこのような形になることがT6.4によりわかります。
アーベル群 A \mathbb{Z}加群です。 a \in Aの群の意味での位数が有限 n = |a|なとき、 na = 0から {\mathcal{O}}_a = (n)となり上で導入した位数と一致します。位数が無限のときは {\mathcal{O}}_a = (0)となります*1。T6.4より、 {\mathcal{O}}_a = (n) , n \neq 0のとき \mathbb{Z}a \cong \mathrm{Z} / (n) = \mathrm{Z} / n \mathrm{Z} \cong Z_n n=0のとき \mathbb{Z}a \cong Z / (0) \cong \mathbb{Z}です(一般に aの位数が0 \Leftrightarrow Ra \cong R(ランク1自由加群))。 \mathbb{Z}a = \langle a \rangleとすると巡回群を思い出しますね。また a=0 \Leftrightarrow |a|=1ですが、一般に aの位数 rについて a=0であることと rが単元であることは a = 1_R a = r^{-1} (r a) = 0から同値になります。

トーション部分加群 A_t = 0のときトーションフリーと言い、例えば(基底が線形独立なことと零因子がないことから)整域上の自由加群はそうなりますが、逆は成立しません。例えば \mathbb{Q}は自由アーベル群ではない(線形独立な元を考えると \mathbb{Z}と同型でなければならないが、 \mathbb{Z} \to \mathbb{Q}単射準同型は全射にはならないから…でいいはず)ですが明らかにトーションフリーです。
しかし、主イデアル整域 R上の有限生成加群 Aに関しては逆も成り立ち、 Aがトーションフリーであることと自由加群であることは一致します(T6.5)。 \mathbb{Q}との違いは有限生成であること( \mathbb{Q}が有限生成だと仮定すると生成元を通分した分母を割り切れない素数を取ってこれてしまう)ですね。
 A = 0のときは明らかなので A \neq 0だけ考えます。 Aがトーションフリーなので零でない生成元の集合 X \neq \emptyset , x \in Xに対して rx = 0 \Leftrightarrow r=0です。なので r_1 x_1 + ... r_k x_k = 0 \Rightarrow r_i = 0となる x_i \in Xを集めた空でない極大な S = \lbrace x_1 , ... , x_k \rbrace \subset Xが作れます(有限生成なので Sは有限集合)。 Sが生成する加群 Fは明らかに自由加群です。 y \in X - Sとすると、 Sの極大性から r_y \neq 0と少なくとも1つは零でない r_1 , ..., r_kを用いて r_y y + r_1 x_1 + ... + r_k x_k = 0 \Rightarrow r_y y = -{\sum}_{i=1}^k r_i x_i \in Fとなります。 r_y \neq 0 Xが有限なことから r = {\prod}_{y \in X - S} r_y \neq 0が(有限の値として) Rに存在し、これは x \in X Sに含まれているかにかかわらず rx \in Fとなります。よって rA  \subset Fが得られ、写像 f : A \to A , a \mapsto ra(可換性を思い出せばこれは R準同型)は \mathrm{Im} f = rA、さらに Aがトーションフリーなので \mathrm{Ker} f = 0です。これらから A \cong \mathrm{Im} f = rA \in Fとなり、PID上の自由加群の部分群は自由(T6.1)から Aは自由となります。


書いてて思ったけど、せっかく本が分離して書いてる定理と証明に私の気持ちをごちゃまぜにしてるので数学の人とか特にめっちゃ怒りそうですね。そもそもこんなノート読まないか。

明日も頑張ります。

*1:こうやって0が出てくるのは環の標数で見たけど、まあ関係ないか…

Hungerford4章読む(12/25)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」22日目の記事です。24日は一人ワインを飲んでみたら全く動けなかったです…。25日は終わりましたが俺たちのアドカレはこれからだ!


6節は主イデアル整域上の有限生成加群の構造について述べるようです。有限生成アーベル群の話が(ユークリッド整域の場合ほぼすぐに、一般のPIDでも置き換えを頑張っていくと)ほぼ使えるらしいけど、ここでは違う向きから攻めていくようです。その他いろいろ言っていますがよくわからないので続きを見ていきます。

以下、加群は全て単位的です。
T6.1は、主イデアル整域 R上の自由加群 Fに対して、 Fの部分加群 Gは自由 R加群 \mathrm{rank} G \leq \mathrm{rank} Fとなると言っています。整域ならば単位的可換環なのでC2.12よりランクがちゃんと定義できるんですね。証明のために、まず基底(の添え字 I)を整列順序します。その時 \lbrace j \in I | j \gt i \rbraceの最小元を考えると、高々1つの元を除いて直後の元 i+1が存在します。直後の元が存在しない(最大)元については \alpha \gt i \in Iを考えると、 J = I \cup \lbrace \alpha \rbraceは整列順序集合で、任意の Iの元が直後の元を持つようにできます。
 F = {\sum}_{i \in I} R x_iを基底 \lbrace x_i | i \lt j \rbraceが生成する部分加群 F_j , j \in Jによって分解していきます。射影に対して準同型定理を用いると F_{i+1} / F_i \cong R x_iで、基底の性質から R x_i \cong Rです。これを用いて G G_j = G \cap F_jで分解していきます。まず G_{i+1} / G_i = G_{i+1} / (G_{i+1} \cap F_i) \stackrel{T1.9}{\cong} (G_{i+1} + F_i) / F_i = ( (G \cap F_{i+1}) + F_i) / F_i F_{i+1} / F_i \cong Rの部分加群です。 Rの部分加群 Rイデアルですが、 Rは主イデアル整域なので全て (c)=Rc , c \in Rの形で書けます。零因子が存在しないので c \neq 0のとき R \cong Rc c = 0のときは Rc = 0となり、 G_{i+1} / G_iはランク1または0の自由加群です。自由加群は射影的なのでT3.4(ii)により短完全列 0 \to G_i \hookrightarrow G_{i+1} \to G_{i+1} / G_i \to 0が分裂し、 G_{i+1} / G_i \overset{\iota}{\underset{\pi}{\rightleftarrows}} G_{i+1} , \pi \iota = 1となります。このとき a \in \mathrm{Im} \iota \cap \mathrm{Ker} \piについて考えると x \stackrel{\iota}{\mapsto} a \stackrel{\pi}{\mapsto} 0 \pi \iota = 1 \iota単射性から a=0すなわち \mathrm{Im} \iota \cap \mathrm{Ker} \pi = 0がわかります。 \forall g \in G_{i+1} , \iota \pi (g) \in \mathrm{Im} \iotaおよび \pi ( g - \iota ( \pi (g) )) = 0 \Rightarrow g - \iota ( \pi (g) ) \in \mathrm{Ker} \piから g \in \mathrm{Im} \iota + \mathrm{Ker} \piが得られ、合わせると G_{i+1} = \mathrm{Im} \iota \oplus \mathrm{Ker} \pi = G_{i+1} / G_i \oplus G_i = R b_i \oplus G_iとなります*1。この b_iの集合 B |B| \leq |I| = \mathrm{rank} Fなので、最後に B Gの基底を張ることを言います。
 Bが線形独立なことは、もし 0 = {\sum}_{j \in J} r_j b_jについて r_k \neq 0となる最大の kとすると(有限和なので存在する)、 0 = {\sum}_{j \lt k} r_j b_j + r_k b_k \in G_k \oplus R b_kだが、 b_k \in G_{k+1} - G_kより r_k = 0となって矛盾することからわかります。
 B Gを生成することは、 Gの任意の元が {\bigcup}_{j \in J} B_j = Bの有限個の線形和でかけることなので、 \forall k \in J , B_k = \lbrace b_j \in B | j \lt k \rbrace G_kを生成することを言えばいいです。超限帰納法を使います;任意の j \lt kに対して B_j G_jを生成することを仮定して kについて B_k G_kを生成することを言います。 k = j+1と書けるときは G_{j+1} = G_j \oplus R b_jを考えればいいです。 k j+1と書けない場合(これは通常の帰納法 n=1に相当)は、 u \in G_k =G \cap F_k, u = {\sum}_{j \lt k} r_j x_jとして考えます。 r_t \neq 0となる最大の t \lt kとすると、 u \in F_{t+1} , u \in G \cap F_{t+1} = G_{t+1}ですが、 t+1 \neq kより t+1 \lt kとなります。帰納法の仮定より u B_{t+1}の線形結合で書けることが言え、全ての kについて B_k G_kを生成することが証明されました。

かなり削って書いたのにめちゃくちゃ長くていろんな道具を使いましたね…。系が2つ導かれるので、それだけ見て終わります。

 n個の元から生成された主イデアル整域 R上の有限生成加群 Aは、C2.2より有限生成なランク n自由 R加群 Fからの準同型像 \pi (F)です。 Aの部分加群 Bについて逆像 {\pi}^{-1}(B) Fの部分加群で、T6.1より \mathrm{rank} {\pi}^{-1}(B) \leq \mathrm{rank} F = nとなり、 \pi ({\pi}^{-1}(B) ) = Bは高々 m = \mathrm{rank} {\pi}^{-1}(B) \leq n個の元から生成されます(C6.2)。

C6.3は、主イデアル整域 R上の単位的加群 Aが自由であることと、それが射影的であることが同値であると言っています。C3.2より自由加群は射影的ですね。逆に Aが射影的なとき、T3.4より自由加群 Fと部分加群 Kを用いて F \cong K \oplus Aとなるので A Fの部分加群と同型になり、T6.1より自由加群であることがわかります。


これはどうやっても残りの3枠には収まりませんね…

明日も頑張ります。

*1:分裂列から G_i \oplus G_{i+1} / G_i \cong G_{i+1}という同型はすぐに言えます。しかし内部直和かどうか(等しいかどうか)を言うには加群の和 G_i + G_{i+1} / G_iによって G_{i+1}が得られるかを言う必要があって、それは分裂列から一足飛びに言えない(からこんなことをしているはず)