Hungerford5章読む(2)
全くやりたくないけど1日坊主はさすがにあれなので…と思ってたら2日ほど寝て過ごしてました。しかも序盤なのに盛大に詰まって…もうだめですね
T1.3は体上で生成された環が多項式環となることを言っています…が、証明のほとんどが演習になってますね…。(vi)を見るとまあ生成群の証明(T1.2.8)と同じですね。すなわち、多項式の集合がを含む環になることから、生成環の最小性よりが言えて、とを含む任意の環はを含むのでとしています。
後半はいまいちピンと来てなかったけど、は展開するとで、有限個のの積にで重みを付けた有限和(なのではの元をすべて含む)だからやっぱりやってることは群のときと一緒なんですよね…。(vii)は、もし生成集合が無限集合でも、その元は有限個の生成元しか持たないということでしょう。
が生成元の順序に依らないことは和や積が可換なことに対応しそうです。は、C3.5.7と関連付けると、と、それぞれT3.5.5を満たすのでとでとなり、もも全(単)射なのでで導出できそう?
(20220702:なんか難しいことを書いてるけど、積が結合的だからでいいのでは…ってなってきた。
ところで、(1)でも書いたように具体的な表示を持ち出すまでもなくこれらは証明できそうですよね…。前者は生成集合の順番が変わるだけですし。後者はちょっと複雑ですが、は明らかにやを含むのでの最小性からが言えて、同様にとから。)
次に体の合成という概念が登場します。の部分体の合成はが生成する体なので、定義よりです。のある部分体についてが成り立つ時、となります*1。有限個の部分体の合成はが生成する体で、は…これは定義に従って順番にやれば明らかでは?演習4.1.5になってるけど…。
の中間体について、次元はT1.2よりと等しくなります。が有限のときはも(T1.2より)有限で、との公倍数となり、T4.2.1とT4.2.7より適当な基底を定めて計算すればが言えるので*2、が得られます。この不等式は(が有限の代わりに)とがともに有限であるときも成立します。なぜならこの時も上のようにの基底を定めて計算することができてやはりを有限に抑えることができるからです*3。
ここからさらに怪しくなります…(演習4.1.21の話)。
(有限のときに)が以外の非自明な共通部分を持つ時、それがやの基底に含まれるように基底を構成するとになるので、対偶よりとなります。逆は成り立たず、すなわち2つの体が自明な交差しかもたない(trivial intersection)であってもそれらが線形無関係(linearly disjoint)でない場合があります(参考:abstract algebra - Degree of composite field - Mathematics Stack Exchange)。すでに上の議論からが互いに素ならば線形無関係になることがわかりますね。
逆が成立する別の条件として、例えばの場合も自明な交差をもつが線形無関係になります。つまりの要素ではないの基底との基底の積は線形独立です。イメージとしてはある点を通る直線は紙にいくらでも引くことができますが線形独立な直線は高々2本しかないということでしょうか。では証明(案)を書きます。を考えるのですが、まずで全体を割ってみます。基底は線形独立なのではの元にはならず、とによってと簡略化されます。とするとこれはは明らかに線形独立なのでいずれにせよ。についてはで括れば言えそうですね*4。
めちゃくちゃ雑にやってるのに全然進まないくてつらい。
Hungerford5章読む(1)
本日2022/4/17は2022年アドベントカレンダーの-228日目になります(2022/11/30を-1日目とする)。4/20からにするとちょうど225=25*9なのでアドカレ9回分とキリがいいのですが、そうやって延期すると一生やらないことを私はよく知ってるので、正直眠たいですが思い立った今からやります。
5章はガロア理論です。数年前に数学科出身の人に「数学をやるならガロアが(楽しいから)おすすめだよ」的なことを言われたので気にはなってたんですよね…気合と根性がなくて先延ばしにしていました。
とりあえず序文を眺めていますが、「体Fを特定の体Kの拡大として考える」「代数拡大・超越拡大があって、超越拡大は6章でやる(そこまで読む日は来るのか?」「ガロア理論は体の拡大をガロア群とかいう、Kの要素を固定する(Kへの制限が恒等になる?)Fの同型写像の群に関連づける」「それによって体の問題を群論に帰着する」…とのことです。まあ5章が終わったころには理解してることでしょう。
とりあえずT1.3の前まで眺めてみました。
体の拡大というとえらそうですが、単に部分体がとなる体を取ってくることなんですね。群と同様に積の単位元は拡大で保存します。環はその部分環を係数とした加群とみなせるので、上の加群を考え、その次元をと書きます。この書き方について、T1.2で次元の積を計算していますが、T4.2.16を読んだときにメモしていた、部分環を係数としたベクトル空間の次元は群の指数とみなせそうな話がはっきり形として現れましたね。
次にが生成する部分体や部分環を考えます。特に、となる中間体となるような場合として、が生成するときに上でが生成する部分体(部分環)を考え、()と書きます。生成集合が有限のときの有限生成拡大といい、生成集合が一点集合のときは単純拡大と言うそうです。は体の部分環なので整域になります。
T1.3でやの構造を調べていきますが、それは次回に回します。()が生成元の順序に依らないことや、()なことは、定義やが結合的なこととかでほとんど自明に成り立ちそうですが、T1.3を見てからもう一度考えてみます。
3章でイデアルの生成は出てたにも関わらず環の生成はなかったのが気になっていました。T1.3をちらっと見た感じ、生成環は有限個の不定元を持つ多項式環の元にの元を代入したものっぽい?じゃなくて演習3.5.4のようにとできそうだけどどのみち不定元の数は有限個なのでを動かしたら一緒か。可換環の部分集合が生成する環は、だと零環になってしまいそうなのでになるんでしょうか?(20220630追記:すべての単位的環は整数環を部分環にもつから。)というかD3.1.5を見たら零体なるものはないんですね(体は1を必ず持つ)。単位的でない環の場合は単位元についてはT3.5.2辺りのように単位元を付与してから適切に部分環を取る?
書き始めたのが4/17の0時辺りで投稿がこの時間になったあたり、明日にでも挫折してそうですが、がんばります。
Hungerford4章読む(1/2)
これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」25日目の記事ではありません。2022年ですね。さあ延長戦の始まりだ
4.7節のタイトルは「ALGEBRAS」…本のタイトル「Algebra」を回収した感じで熱いですね。日本語では「代数」よりも「(結合的)多元環」と言うようです。
多元環の定義7.1を読みます。単位的可換環に対して代数とは、環について、が単位的(左*1)加群であって、左作用と環の積が両立するものです。特にが可除環のとき、代数を可除代数と言います。
定義を見てもよくわからないので例を見ていきます。
まず簡単な例として環は加群であり整数倍について考えると確かに代数です(20220701追記:このときD7.1の二番目の条件が環の分配法則みたいになる)。他にも単位的可換環上の多項式環やべき級数の環、あと要素がの元となる行列の環は、まあ代数でしょう。
少し捻った例として、体上のベクトル空間について、自己準同型の集合は和を、積は関数の合成として環であり、の作用に関して考えると代数になります。このように体上のベクトル空間に多元環の構造を与えたもので、特に有限次元のものを有限次元代数と言うそうです。
さらに凝った例として、(乗法的)群と可換環として群環も代数であり、上のの群代数と言います。群環の元はという有限の形式和で定義されていて、和と積と単位元によって単位的環でした。加群の構造は作用で得られて、可換性により作用と群の積が両立します。
複素数体や実四元数の(可除)環は実数体上の可除代数です。
最初の例で環が代数だと書きました。写像はアーベル群の準同型です。整数倍と先の準同型の関係は多元環における作用と環の積の両立に対応することがわかります。逆に、このようなテンソル積からの写像を用いて多元環の特徴づけにすることができます(T7.2)。
単位的可換環と単位的加群について、が代数であることは、加群準同型についてとが可換になる*2ことと同値になります。さらに代数が単位元をもつことは、加群準同型について、と、同様にとが可換になる*3ことと同値になります。このようなを積写像、を単位写像と言います。
()テンソル積からの写像なのでテンソル積の普遍性(T5.6)から考えます。すなわち双線形写像から積写像を定義すると、どちらの順でもになります。積の単位元となる*4とき、単位写像とすると、これは加群準同型でどちらの順でもとなります。
()可換図式を満たす積写像をとすると、上の例で見たようにが得られます。同様に可換図式を満たす単位写像をとすると、よりとなります。
D7.3で多元環の用語をいくつか導入します。代数の部分代数を、の部分環でありかつ部分加群であるものと定義します。次に代数のイデアル(代数イデアル)を環のイデアルでかつ部分加群であることとします。代数の準同型を環準同型であってかつ加群準同型であるものとします。
多元環の環の意味でのイデアルが代数イデアルになるとは限りません。例えばベクトル空間にで環の構造を与えると代数になります。の真部分群は環のイデアルですが、スカラー積が閉じないため代数になりません。しかしが積の単位元を持つ(そのような積を与えた)とき、環のイデアルは代数イデアルにもなります;よりイデアルについて。
代数イデアルによるの剰余代数や代数の族の直積や直和は、剰余環や環の直積・直和と同じように考えればよさそうです。
テンソル積は代数を構築するのに使われるそうです。そのことを証明するために、加群の同型を確認します。まず双線形写像から群準同型を誘導し、これがスカラー積によって加群の準同型になることを確認すれば、逆写像は簡単に作れるのでよさそうです。
ではT7.4を見ます。これは代数についてを以下の関数の合成で定義します;。ここでをの積写像とします。は代数となり、このは積写像です。
前半の写像はということだと思います。写像のテンソル積はT5.5で定義されています。の生成元について考えると、積写像は具体的にとなり、可換図式を満たしそうです。積の単位元が存在するとき、とすればこれが単位写像になりが単位元となります。
ここで定義した代数のテンソル積を用いて体上の可除代数の構造を調べていくようです。9章で(そこまで読む日が来るのか?)
やった~~~~~~~終わった~~~~~~~~~~~~~!!!!!!!!!!
少しだけ2021年を飛び出しましたが、これで4節「加群」を全て読んだことになります。演習や難しいところを見て見ぬふりしたので理解した気は全くしませんが…。最初のほうは余裕があったのか短くまとめようとして(余計にわかりにくくして)ましたが、後半はただの写経する機械になってしまいました。
次はどうしよう、素直に5章のガロア理論に進むのがいい?あまり沼にはまりたくはないのでほどほどの楽しさが欲しいところなんですが、何かいいのがあればいいな。
もう頑張らなくていいんだ。
Hungerford4章読む(12/31)
これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」25日目の記事です。最終日!
いよいよ6節も大詰めです。T6.6~6.9によって有限生成加群を素数のべきの位数の巡回加群に分解しましたが、次に有限生成アーベル群の時と同様にもう1つの分解を得ます。最後にそのような分解がそれぞれ一意であることを見て締めくくります。以降で環は主イデアル整域、加群はすべて単位的です。
L6.10ではそのための道具として、L2.2.5の加群版を導入します。
加群に対して、とはの部分加群だということは多分簡単にわかりそうです。2.2節との類似を考えるとの場合について、は位数が以下の直和因子を消す、は位数以下の直和因子を取り出すような使い方をしそうですね。これらは直和のときが成り立ちます。証明は同型写像の制限を考えたらいいのでしょうか。
続いてが体であることが、T3.3.4(i)とPIDの非零な素イデアルは極大であること*1とT3.2.20(i)からわかり、さらにその時が上のベクトル空間であると書いてます。これは作用について考えれば証明できそうです。
剰余環は加群でもあります。このときとが成立します。最初にPIDにおいて剰余環がが生成する循環加群となることに注意します。前者の同型はがが生成する巡回加群であることを考えます。の位数がなのでT6.4よりです。後者はがが生成する巡回加群であることを考えます。一段落前の結果からが上のベクトル空間、すなわち基底が1つの自由加群となり、です。
が加群の同型のとき、が成立します。これも(T2.2.5を見ながら)同型の制限を考えると証明できそうです。
L6.11でPID上の位数の巡回加群(T6.4によりと同型になる)の分解を得ます。すなわちは(一意に)素元分解され、このとき加群の同型が存在します。これは互いに素なに対してが証明できれば、の素元分解で出る素元の数に関して帰納法を用いて証明できます。
まず単射を考えるとイデアルはに写ることから、C1.8によって(単射)準同型が誘導されます。同様にも得られます。直和の普遍性を考えるとが一意に得られます。これが同型であればいいですね。実際、よりとできて、よりが全射となることがわかります。単射性は次のようにします*2;を用いてをの式に変形すればにできます。すなわちからです。同様にを得ればが自明になることが言えます。
さていよいよ加群の分解定理を得ます(T6.12)。主イデアル整域上の有限生成加群について次の2つの分解が存在します。
- は有限ランクの自由部分加群と、有限個の巡回トーション加群に分解され、その位数(各は同じでもいい)はを満たします。自由加群のランクと位数イデアルはにより一意に定まります。この位数を不変因子と言います。
- は有限ランクの自由部分加群と、有限個の巡回トーション加群に分解され、その位数は(各素元と指数は同じでもいい)となります。自由加群のランクと位数イデアルはにより(イデアルの順序を除き)一意に定まります。このを単因子といいます。
単因子の存在はT6.6~6.9ですでに見ました。アーベル群のときと同様にして不変因子は単因子から計算されます。すなわち不変因子に出現した素元のリストに対して、をかつとなるように定めます。するとのようにして不変因子が得られます。 T6.6により自由部分加群は分解によらずと同型になり、C2.12よりPID上の自由加群のランクは一意に定まります。巡回加群のランクの一意性を示す際には主イデアル整域の既約元分解を用います。整数環の場合は単元がならば素元を正に限定することで一意に元を分解できますが、一般のPIDの場合はそのような限定が難しいので位数イデアルを考えて一意性を主張します。すなわちの対応物としてを考えて、の直和因子の数をの体における次元とみなし、その一意性を用います。
最後にC6.13で有限生成加群が同型になる条件を言っています。PID上の2つの有限生成加群が同型であることと、かつは同じ不変因子(または単因子)を持つことが同値となります。それぞれの分解を与えると、T6.4あたりを使えばいいんでしょうか。
非常につらい1ヶ月でした…。遅れに遅れてクリスマスどころか大晦日になってしまいましたが6節まできれいに終わることができてよかったですね。えっ7節?
まだ頑張らないといけないの…?
Hungerford4章読む(12/28)
これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」24日目の記事です。今夜はクリスマス~
今日読む3つの定理(T6.6、6.7、6.9)によって主イデアル整域上の単位的な有限生成加群の1つ目の分解を得ます。
まずがトーション部分加群と自由加群によってと分解できます(T6.6)。剰余加群の元とについてとなるのではトーションフリーです。は(と同様に)PID上で有限生成なのでT6.5より有限ランクの自由加群です。自由加群は射影的なのでT3.4より完全列が分裂してが得られます。この同型によってはに写り、は自然な射影の右逆写像となることから単射像に写ります。自由加群の単射像は自由加群になる(と思う。基底からの包含を合成で考えて、任意のに対してとできそう)のでは有限ランクの自由加群となります。トーション加群と自由加群は0以外の共通部分を持たないのでが得られます*1。
(20220625追記:
ここの=の処理についてもう少しまじめに考える。実は一般に、右分裂列から直和分解が得られます。
証明します。直和因子の共通部分からをとると、の単射性からが、の単射性からがとれ、。完全性からとなり、。次にに対して、から、。さらにより。逆は明らか。
T6.1も同じ形式に取り込めます。左右の分裂列は同値なことはすでにT1.18で見ましたが再考します。左分裂列に対して、とします。となるので、準同型定理よりが唯一存在し(余核の普遍性)、これにより右分裂列が得られます。
まとめると、分裂列は以下の形で特徴づけられます:に対し、。前3式がが直和の入射や直積の射影と対応することをいい、最後の式によって実はこれらによる直和(=直積)とBが(同型よりも強く)等しいことがわかります。
)
T6.7ではトーション部分加群のほうに注目します。をPID上トーション加群として、素元に対してとします。このときはの部分加群で、はと直和分解されます。特にが有限生成ならば有限個のだけが非零となります。これは各生成元は高々有限個の基底の線形和なので、無限個の直和にならないことからすぐわかります。
部分加群であることを言いたいので和と係数環の作用について閉じることを示します(0と逆元は明らか)。とすると、を取ってくることでとできます。T6.4よりとなりが得られます。の可換性からとなり作用についても閉じているのでは部分加群です。
を考えます。既約元(素元)分解して、とするとの最大公約元はとなります。T3.11よりとなるが存在し、ですが、各項についてとなることから各の和がを生成することを示すことがわかります。あとは共通部分が0になることを言えばいいです。すなわちをが生成する部分加群としてを考察します。のときかつとなります。からが得られます。このと(すなわち)が互いに素なので、すなわちです。
の性質を考えるためにL6.8を準備します。PID上加群がある素元とに対してを満たし、の位数とします。このとき、ならばとなります。そのようなを集めることで(の場合はとすれば)と部分加群で直和分解することができます。
証明です。のとき、が存在しますが、から最小の正整数が存在します(のとき)。つまりで、既約元分解よりとできるのでとなります。の位数からT6.4よりとなり、と合わせるととなります。したがってという元を作ることができます(積の逆元の心配がない)。このについて(の最小性)から、が成立します。ここで、すなわちを仮定します。よりであり、とが互いに素なことからとできます。からが得られます。これはとするとの最小性に矛盾しとするとに矛盾するのでが導かれました。
後半の証明に向かいます。の場合を考えばいいです。に対してとなるような加群の集合を考えます。すでにそのようなものとしてが作れることは上で見たので、です。を集合の包含による半順序集合として、任意の全順序部分集合に対して上界が存在することからZornによって極大元の存在がわかります。このとによってが生成されることを見れば証明が終わります。そこでを考察します。からです。よりです。よっての位数はであり、を得ます。ここで、もしがの巡回加群でない(つまり)と仮定すると、前半の定理を援用してが得られます(剰余加群なので微妙に形が異なることに注意)。と計算できますが、これはを意味します。よりこれはの最大性に矛盾します。よってとなり、が得られました。
後半部分の別証明が演習として出てきており、との単射性を用いて分裂列を作るそうですが、見なかったことにします。誘導部分だけ眺めると加群と加群を相互に言い換えられることを用いて、まず係数環をで考えてから最後の分裂列でについて考える流れらしい?
T6.9でが位数の巡回加群の直和で書けることがわかります。すなわちはL2.2.5(iii)(アーベル群からの直和を集めたもの)の類似物と言えます。
証明はの生成元の数に関する帰納法で行います。の場合はの生成元も1つなので明らかです。として、の生成元の位数をとします。並び替えによってと選べば、が得られます。こうするとL6.8が使えてとできます。自然な全射を考えるとはで生成されますが、よりの生成元はを除いた個以下になります。よってに対して帰納法の仮定を適用できて、は位数の巡回加群の直和で書けます(この添え字の付け方は証明がきれいになるためで、生成元の位数と直和因子の位数の対応関係は特に考えてないことに注意)。を考えるとが得られます。は位数の巡回加群なので、は位数の巡回加群の直和で書けることが言えました。
これらを合わせると、PID上の有限生成加群はの形に書けることが言えます。一意性に関しては続きに書かれているので次回読みます。
あと1日!長くつらかったアドベントカレンダーもようやく終わりそうですね。
明日も頑張ります。
*1:同型から=を導いた部分はT6.1と同じ流れで行けると思うけど…
Hungerford4章読む(12/26)
これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」23日目の記事です。まだまだまだまだ終わんないよ♫
引き続き(というか6節通して)加群は単位的です。
T6.4では群の要素の位数やアーベル群のトーション部分群の加群版を作っていきます。整域上の左加群に対してとすると、これはのイデアルであることは可換性に注意すればわかります。このが自明とならないは、逆元を取った和との作用に関して閉じていることを言えば部分加群です。位数(order)イデアルだからO、トーション(torsion)部分加群だからtなんですね。T1.5の全射の核がであることに注目すると、第一同型定理よりがわかります。
さらにが主イデアル整域でが素元のときを考えます。とすると、イデアルに対してとできます。は単元ですが、これは既約元(PIDなので素元と同じ)と単元の積は元の既約元と同伴関係にありやはり既約となることから、既約元で分解するときには単元の自由度が残るからです(T3.2、T3.4、D3.5)。代入して計算を進めるとが得られます。逆に任意のに対してとするとになりますが、この時とするととなり矛盾するので、になります。
例が2つあるので見ていきます。
主イデアル整域とすると、自身がから生成される巡回加群であることを思い出せばはから生成される巡回加群です。このの位数イデアルですが、このときの位数を、は位数の巡回加群と言います。逆に任意のPID上の巡回加群はこのような形になることがT6.4によりわかります。
アーベル群は加群です。の群の意味での位数が有限なとき、からとなり上で導入した位数と一致します。位数が無限のときはとなります*1。T6.4より、のとき、のときです(一般にの位数が0(ランク1自由加群))。とすると巡回群を思い出しますね。またですが、一般にの位数についてであることとが単元であることはから同値になります。
トーション部分加群のときトーションフリーと言い、例えば(基底が線形独立なことと零因子がないことから)整域上の自由加群はそうなりますが、逆は成立しません。例えばは自由アーベル群ではない(線形独立な元を考えるとと同型でなければならないが、の単射準同型は全射にはならないから…でいいはず)ですが明らかにトーションフリーです。
しかし、主イデアル整域上の有限生成加群に関しては逆も成り立ち、がトーションフリーであることと自由加群であることは一致します(T6.5)。との違いは有限生成であること(が有限生成だと仮定すると生成元を通分した分母を割り切れない素数を取ってこれてしまう)ですね。
のときは明らかなのでだけ考えます。がトーションフリーなので零でない生成元の集合に対してです。なのでとなるを集めた空でない極大なが作れます(有限生成なのでは有限集合)。が生成する加群は明らかに自由加群です。とすると、の極大性からと少なくとも1つは零でないを用いてとなります。とが有限なことからが(有限の値として)に存在し、これはがに含まれているかにかかわらずとなります。よってが得られ、写像(可換性を思い出せばこれは準同型)は、さらにがトーションフリーなのでです。これらからとなり、PID上の自由加群の部分群は自由(T6.1)からは自由となります。
書いてて思ったけど、せっかく本が分離して書いてる定理と証明に私の気持ちをごちゃまぜにしてるので数学の人とか特にめっちゃ怒りそうですね。そもそもこんなノート読まないか。
明日も頑張ります。
Hungerford4章読む(12/25)
これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」22日目の記事です。24日は一人ワインを飲んでみたら全く動けなかったです…。25日は終わりましたが俺たちのアドカレはこれからだ!
6節は主イデアル整域上の有限生成加群の構造について述べるようです。有限生成アーベル群の話が(ユークリッド整域の場合ほぼすぐに、一般のPIDでも置き換えを頑張っていくと)ほぼ使えるらしいけど、ここでは違う向きから攻めていくようです。その他いろいろ言っていますがよくわからないので続きを見ていきます。
以下、加群は全て単位的です。
T6.1は、主イデアル整域上の自由加群に対して、の部分加群のは自由加群でとなると言っています。整域ならば単位的可換環なのでC2.12よりランクがちゃんと定義できるんですね。証明のために、まず基底(の添え字)を整列順序します。その時の最小元を考えると、高々1つの元を除いて直後の元が存在します。直後の元が存在しない(最大)元についてはを考えると、は整列順序集合で、任意のの元が直後の元を持つようにできます。
を基底が生成する部分加群によって分解していきます。射影に対して準同型定理を用いるとで、基底の性質からです。これを用いてもで分解していきます。まずはの部分加群です。の部分加群はのイデアルですが、は主イデアル整域なので全ての形で書けます。零因子が存在しないのでのとき、のときはとなり、はランク1または0の自由加群です。自由加群は射影的なのでT3.4(ii)により短完全列が分裂し、となります。このときについて考えると、との単射性からすなわちがわかります。およびからが得られ、合わせるととなります*1。このの集合はなので、最後にがの基底を張ることを言います。
が線形独立なことは、もしについてとなる最大のとすると(有限和なので存在する)、だが、よりとなって矛盾することからわかります。
がを生成することは、の任意の元がの有限個の線形和でかけることなので、がを生成することを言えばいいです。超限帰納法を使います;任意のに対してがを生成することを仮定してについてがを生成することを言います。と書けるときはを考えればいいです。がと書けない場合(これは通常の帰納法でに相当)は、として考えます。となる最大のとすると、ですが、よりとなります。帰納法の仮定よりはの線形結合で書けることが言え、全てのについてがを生成することが証明されました。
かなり削って書いたのにめちゃくちゃ長くていろんな道具を使いましたね…。系が2つ導かれるので、それだけ見て終わります。
個の元から生成された主イデアル整域上の有限生成加群は、C2.2より有限生成なランク自由加群からの準同型像です。の部分加群について逆像はの部分加群で、T6.1よりとなり、は高々個の元から生成されます(C6.2)。
C6.3は、主イデアル整域上の単位的加群が自由であることと、それが射影的であることが同値であると言っています。C3.2より自由加群は射影的ですね。逆にが射影的なとき、T3.4より自由加群と部分加群を用いてとなるのではの部分加群と同型になり、T6.1より自由加群であることがわかります。
これはどうやっても残りの3枠には収まりませんね…
明日も頑張ります。