Hungerford4章読む(12/26)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」23日目の記事です。まだまだまだまだ終わんないよ♫


引き続き(というか6節通して)加群は単位的です。

T6.4では群の要素の位数やアーベル群のトーション部分群の加群版を作っていきます。整域 R上の左加群 Aに対して {\mathcal{O}}_a = \lbrace r \in R | ra = 0 \rbraceとすると、これは Rイデアルであることは可換性に注意すればわかります。この {\mathcal{O}}_aが自明とならない A_t = \lbrace a \in A | {\mathcal{O}}_a \neq 0 \rbraceは、逆元を取った和と Rの作用に関して閉じていることを言えば部分加群です。位数(order)イデアルだからO、トーション(torsion)部分加群だからtなんですね。T1.5の全射 R \to Raの核が {\mathcal{O}}_aであることに注目すると、第一同型定理より R / {\mathcal{O}}_a \cong Raがわかります。
さらに Rが主イデアル整域で p \in Rが素元のときを考えます。 p^{i} a = 0 \Leftrightarrow (p^{i}) \subset {\mathcal{O}}_aとすると、イデアル {\mathcal{O}}_a = (r)に対して r | p^{i} \Rightarrow r = p^{j} u , 0 \leq j \leq iとできます。 uは単元ですが、これは既約元(PIDなので素元と同じ)と単元の積は元の既約元と同伴関係にありやはり既約となることから、既約元で分解するときには単元の自由度が残るからです(T3.2、T3.4、D3.5)。代入して計算を進めると {\mathcal{O}}_a = (r) = (p^{j} u) = (p^{j})が得られます。逆に任意の j \lt iに対して p^{j} a = 0とすると p^{j} \in {\mathcal{O}}_aになりますが、この時 {\mathcal{O}}_a = (p^{i})とすると p^{i} | p^{j}となり矛盾するので、 {\mathcal{O}}_a \neq (p^{i})になります。

例が2つあるので見ていきます。
イデアル整域 R , r \in Rとすると、 R自身が 1_Rから生成される巡回 R加群であることを思い出せば R / (r) a = 1_R + (r)から生成される巡回加群です。この aの位数イデアル {\mathcal{O}}_a = (r)ですが、このとき aの位数を r Ra = R / (r)は位数 rの巡回加群と言います。逆に任意のPID上の巡回加群はこのような形になることがT6.4によりわかります。
アーベル群 A \mathbb{Z}加群です。 a \in Aの群の意味での位数が有限 n = |a|なとき、 na = 0から {\mathcal{O}}_a = (n)となり上で導入した位数と一致します。位数が無限のときは {\mathcal{O}}_a = (0)となります*1。T6.4より、 {\mathcal{O}}_a = (n) , n \neq 0のとき \mathbb{Z}a \cong \mathrm{Z} / (n) = \mathrm{Z} / n \mathrm{Z} \cong Z_n n=0のとき \mathbb{Z}a \cong Z / (0) \cong \mathbb{Z}です(一般に aの位数が0 \Leftrightarrow Ra \cong R(ランク1自由加群))。 \mathbb{Z}a = \langle a \rangleとすると巡回群を思い出しますね。また a=0 \Leftrightarrow |a|=1ですが、一般に aの位数 rについて a=0であることと rが単元であることは a = 1_R a = r^{-1} (r a) = 0から同値になります。

トーション部分加群 A_t = 0のときトーションフリーと言い、例えば(基底が線形独立なことと零因子がないことから)整域上の自由加群はそうなりますが、逆は成立しません。例えば \mathbb{Q}は自由アーベル群ではない(線形独立な元を考えると \mathbb{Z}と同型でなければならないが、 \mathbb{Z} \to \mathbb{Q}単射準同型は全射にはならないから…でいいはず)ですが明らかにトーションフリーです。
しかし、主イデアル整域 R上の有限生成加群 Aに関しては逆も成り立ち、 Aがトーションフリーであることと自由加群であることは一致します(T6.5)。 \mathbb{Q}との違いは有限生成であること( \mathbb{Q}が有限生成だと仮定すると生成元を通分した分母を割り切れない素数を取ってこれてしまう)ですね。
 A = 0のときは明らかなので A \neq 0だけ考えます。 Aがトーションフリーなので零でない生成元の集合 X \neq \emptyset , x \in Xに対して rx = 0 \Leftrightarrow r=0です。なので r_1 x_1 + ... r_k x_k = 0 \Rightarrow r_i = 0となる x_i \in Xを集めた空でない極大な S = \lbrace x_1 , ... , x_k \rbrace \subset Xが作れます(有限生成なので Sは有限集合)。 Sが生成する加群 Fは明らかに自由加群です。 y \in X - Sとすると、 Sの極大性から r_y \neq 0と少なくとも1つは零でない r_1 , ..., r_kを用いて r_y y + r_1 x_1 + ... + r_k x_k = 0 \Rightarrow r_y y = -{\sum}_{i=1}^k r_i x_i \in Fとなります。 r_y \neq 0 Xが有限なことから r = {\prod}_{y \in X - S} r_y \neq 0が(有限の値として) Rに存在し、これは x \in X Sに含まれているかにかかわらず rx \in Fとなります。よって rA  \subset Fが得られ、写像 f : A \to A , a \mapsto ra(可換性を思い出せばこれは R準同型)は \mathrm{Im} f = rA、さらに Aがトーションフリーなので \mathrm{Ker} f = 0です。これらから A \cong \mathrm{Im} f = rA \in Fとなり、PID上の自由加群の部分群は自由(T6.1)から Aは自由となります。


書いてて思ったけど、せっかく本が分離して書いてる定理と証明に私の気持ちをごちゃまぜにしてるので数学の人とか特にめっちゃ怒りそうですね。そもそもこんなノート読まないか。

明日も頑張ります。

*1:こうやって0が出てくるのは環の標数で見たけど、まあ関係ないか…