Hungerford4章読む(12/25)

これは「今年中にHungerford4章読むぞ Advent Calendar 2021」22日目の記事です。24日は一人ワインを飲んでみたら全く動けなかったです…。25日は終わりましたが俺たちのアドカレはこれからだ!


6節は主イデアル整域上の有限生成加群の構造について述べるようです。有限生成アーベル群の話が(ユークリッド整域の場合ほぼすぐに、一般のPIDでも置き換えを頑張っていくと)ほぼ使えるらしいけど、ここでは違う向きから攻めていくようです。その他いろいろ言っていますがよくわからないので続きを見ていきます。

以下、加群は全て単位的です。
T6.1は、主イデアル整域 R上の自由加群 Fに対して、 Fの部分加群 Gは自由 R加群 \mathrm{rank} G \leq \mathrm{rank} Fとなると言っています。整域ならば単位的可換環なのでC2.12よりランクがちゃんと定義できるんですね。証明のために、まず基底(の添え字 I)を整列順序します。その時 \lbrace j \in I | j \gt i \rbraceの最小元を考えると、高々1つの元を除いて直後の元 i+1が存在します。直後の元が存在しない(最大)元については \alpha \gt i \in Iを考えると、 J = I \cup \lbrace \alpha \rbraceは整列順序集合で、任意の Iの元が直後の元を持つようにできます。
 F = {\sum}_{i \in I} R x_iを基底 \lbrace x_i | i \lt j \rbraceが生成する部分加群 F_j , j \in Jによって分解していきます。射影に対して準同型定理を用いると F_{i+1} / F_i \cong R x_iで、基底の性質から R x_i \cong Rです。これを用いて G G_j = G \cap F_jで分解していきます。まず G_{i+1} / G_i = G_{i+1} / (G_{i+1} \cap F_i) \stackrel{T1.9}{\cong} (G_{i+1} + F_i) / F_i = ( (G \cap F_{i+1}) + F_i) / F_i F_{i+1} / F_i \cong Rの部分加群です。 Rの部分加群 Rイデアルですが、 Rは主イデアル整域なので全て (c)=Rc , c \in Rの形で書けます。零因子が存在しないので c \neq 0のとき R \cong Rc c = 0のときは Rc = 0となり、 G_{i+1} / G_iはランク1または0の自由加群です。自由加群は射影的なのでT3.4(ii)により短完全列 0 \to G_i \hookrightarrow G_{i+1} \to G_{i+1} / G_i \to 0が分裂し、 G_{i+1} / G_i \overset{\iota}{\underset{\pi}{\rightleftarrows}} G_{i+1} , \pi \iota = 1となります。このとき a \in \mathrm{Im} \iota \cap \mathrm{Ker} \piについて考えると x \stackrel{\iota}{\mapsto} a \stackrel{\pi}{\mapsto} 0 \pi \iota = 1 \iota単射性から a=0すなわち \mathrm{Im} \iota \cap \mathrm{Ker} \pi = 0がわかります。 \forall g \in G_{i+1} , \iota \pi (g) \in \mathrm{Im} \iotaおよび \pi ( g - \iota ( \pi (g) )) = 0 \Rightarrow g - \iota ( \pi (g) ) \in \mathrm{Ker} \piから g \in \mathrm{Im} \iota + \mathrm{Ker} \piが得られ、合わせると G_{i+1} = \mathrm{Im} \iota \oplus \mathrm{Ker} \pi = G_{i+1} / G_i \oplus G_i = R b_i \oplus G_iとなります*1。この b_iの集合 B |B| \leq |I| = \mathrm{rank} Fなので、最後に B Gの基底を張ることを言います。
 Bが線形独立なことは、もし 0 = {\sum}_{j \in J} r_j b_jについて r_k \neq 0となる最大の kとすると(有限和なので存在する)、 0 = {\sum}_{j \lt k} r_j b_j + r_k b_k \in G_k \oplus R b_kだが、 b_k \in G_{k+1} - G_kより r_k = 0となって矛盾することからわかります。
 B Gを生成することは、 Gの任意の元が {\bigcup}_{j \in J} B_j = Bの有限個の線形和でかけることなので、 \forall k \in J , B_k = \lbrace b_j \in B | j \lt k \rbrace G_kを生成することを言えばいいです。超限帰納法を使います;任意の j \lt kに対して B_j G_jを生成することを仮定して kについて B_k G_kを生成することを言います。 k = j+1と書けるときは G_{j+1} = G_j \oplus R b_jを考えればいいです。 k j+1と書けない場合(これは通常の帰納法 n=1に相当)は、 u \in G_k =G \cap F_k, u = {\sum}_{j \lt k} r_j x_jとして考えます。 r_t \neq 0となる最大の t \lt kとすると、 u \in F_{t+1} , u \in G \cap F_{t+1} = G_{t+1}ですが、 t+1 \neq kより t+1 \lt kとなります。帰納法の仮定より u B_{t+1}の線形結合で書けることが言え、全ての kについて B_k G_kを生成することが証明されました。

かなり削って書いたのにめちゃくちゃ長くていろんな道具を使いましたね…。系が2つ導かれるので、それだけ見て終わります。

 n個の元から生成された主イデアル整域 R上の有限生成加群 Aは、C2.2より有限生成なランク n自由 R加群 Fからの準同型像 \pi (F)です。 Aの部分加群 Bについて逆像 {\pi}^{-1}(B) Fの部分加群で、T6.1より \mathrm{rank} {\pi}^{-1}(B) \leq \mathrm{rank} F = nとなり、 \pi ({\pi}^{-1}(B) ) = Bは高々 m = \mathrm{rank} {\pi}^{-1}(B) \leq n個の元から生成されます(C6.2)。

C6.3は、主イデアル整域 R上の単位的加群 Aが自由であることと、それが射影的であることが同値であると言っています。C3.2より自由加群は射影的ですね。逆に Aが射影的なとき、T3.4より自由加群 Fと部分加群 Kを用いて F \cong K \oplus Aとなるので A Fの部分加群と同型になり、T6.1より自由加群であることがわかります。


これはどうやっても残りの3枠には収まりませんね…

明日も頑張ります。

*1:分裂列から G_i \oplus G_{i+1} / G_i \cong G_{i+1}という同型はすぐに言えます。しかし内部直和かどうか(等しいかどうか)を言うには加群の和 G_i + G_{i+1} / G_iによって G_{i+1}が得られるかを言う必要があって、それは分裂列から一足飛びに言えない(からこんなことをしているはず)